
大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2024年7月29日(令和6年7月29日)
本日は、海上自衛隊の潜水艦のお話。
とてもマイナーですが、極めて重要な記事です。
したがって、拙ブログにてご紹介します。
潜水艦製造メーカーは2社必要である
我が国で潜水艦を建造できるのは川崎重工業(川重)と三菱重工業(三菱重工)の2社だが、潜水艦メーカーが本当に2社必要なのだろうか。
(中略)
海自潜水艦の設計は両社が共同で行っており、同じ潜水艦を隔年で建造しほぼ同じ価格で約400億円の売り上げを分け合っている。
つまり2社が存在することで開発技術や性能、調達や維持コスト、品質などで競争は存在しない。
実質的に1社の仕事を2社で分け合っている。
しかも両社の潜水艦ドックは神戸に隣り合わせで所在する。
例えばこれが、片方が川崎あたりにでもあるのならば震災や敵の攻撃からのリスク分散という名目もあるが、それもない。
無論価格や品質での競合も起こっていない。
軍事ジャーナリストの清谷 信一氏(以下敬称略)の記事になります。
私とは意見が異なりますが、傾聴に値する記事を出す方なので、勉強させていただいております。
まず、上記引用元記事の内容をまとめさせていただくと、以下のようになります。
1、我が国日本の潜水艦建造メーカーは川崎重工と三菱重工の2社体制だが、1社に統合するべき。
2、設計も共同、同様の潜水艦を交互に建造し、売り上げを分け合っており、競合関係ではない。
3、建造場所が分散されているわけでもないから、仮想敵国からの攻撃に備えてのリスクヘッジになっていない。
2と3に関しては激しく同意します。
しかしながら、私個人としては、川崎重工と三菱重工の潜水艦建造事業の統合には反対です。
なぜならば、戦争を想定、または核ミサイル発射プラットフォームを整備するために生産能力を高める必要があるからです。
戦争になって海上自衛隊の兵器が破壊されるのは当然だ
まず、ご理解いただきたいことがあります。
仮想敵国との戦争が勃発した場合、人的損耗と兵器損耗は当然のこととして認識しなければなりません。
言い換えるならば、戦争になって、仮想敵国が保有する軍事力との衝突で無傷ということはあり得ません。
潜水艦に限定して申し上げれば、戦争で潜水艦が撃沈するということも十分想定できます。
したがって、潜水艦建造メーカーが2社体制というのは悪い話ではありません。
平時の感覚で兵器生産能力を測定するのは愚の骨頂を言わざるを得ません。
戦争で潜水艦が沈められることを想定して、できるだけ早急に潜水艦を建造する能力を保持するべきでしょう。
その観点から申し上げれば、2社の潜水艦建造場所の分散は急務です。
建造場所を新規に増設し、ミサイルの飽和攻撃を受けても大丈夫なような防衛体制を構築するべきと考えます。
有事を想定したリスクヘッジという意味で潜水艦建造メーカーの体制を批判する清谷 信一は正しいと言えます。
潜水艦建造をペースを上げて戦略型潜水艦を保有せよ
事業統合すれば潜水艦の製造ペースを下げることも可能だろう。
その分防衛費を節約できる。
海自の潜水艦部隊は長年16隻(+練習艦)体制だったがこれは戦略的な理由というよりも潜水艦メーカー2社を維持することが優先された結果だ。
当時潜水艦はこの体制のためにわずか15年で「使い捨て」にされてきた。
他国ではありえないペースで廃棄している。
実際海自は耐用年数を15年と定めている。
他国は20~30年ぐらい使用され、退役後に輸出されることも少ない。
確かに艦齢が長くなれば潜水可能水深深度が浅くなることはあるが、15年でそこまでひどくなることはない。
清谷 信一は事業統合すれば、潜水艦の建造ペースを下げることが可能となり、防衛費節約になると主張します。
私はこの意見に反対です。
なぜならば、台湾有事が眼前と迫っている我が国日本の安全保障環境に鑑み、潜水艦を増強するべきだからです。
海上自衛隊が保有する潜水艦は攻撃型潜水艦であり、戦略型潜水艦ではありません。
ちなみに、攻撃型潜水艦とは仮想敵国の水上艦船・潜水艦を目標として、これを攻撃する目的で建造された潜水艦のことです。
戦略型潜水艦とは、弾道ミサイルや巡航ミサイルを積載し、仮想敵国に対する戦略攻撃を行うことを目的として建造された潜水艦のことです。
※近年では戦略型という区別ではなく、もっと細かい分け方をするようですが、拙ブログでは「戦略型」と呼称します。
このまま2社体制を堅持し、1社には攻撃型潜水艦を、もう1社には戦略型潜水艦を建造するよう手配するべきかと。
我が国日本が核武装する場合、弾道ミサイルなのか巡航ミサイルなのかはわかりませんが、戦略型潜水艦は必須です。
仮想敵国の第一撃(ファースト・アタック)で破壊されない、核ミサイル発射用の潜水艦を整えるためにはメーカーが多い方がいいのですよ。
場合によっては、2社とも毎年1隻ほど戦略型潜水艦を建造してノウハウを高めるというのも一案かと。
この案に関しては今後の検討材料とさせていただき、これ以上の詳細な説明は割愛させていただきます。
潜水艦の耐用年数に関しては、清谷 信一の主張は正しいと言えます。
なぜならば、潜水艦の数を増やすために、潜水艦の耐用年数の延長を決断できたからです。
本来廃棄するはずの潜水艦を廃棄せず、潜水艦を新規建造すればおのずと潜水艦の数は増えますので。
潜水艦を増強するのは必須ならば人員確保が急務である
潜水艦22隻体制を維持することは今後、人的資源の面からも不可能だ。
護衛艦などの水上戦闘艦にしても慢性的に乗員の充足率はかなり低い。
そして潜水艦乗組員、サブマリーナは航海中に密閉させた艦内で過ごすことからより厳しい適性が求められる。
潜水艦の乗員が不足しているという話は有名であり、自衛隊に興味関心のある人間なら誰もが一度は聞いた話かと存じます。
なぜ、潜水艦の乗員が不足しているのでしょうか。
私は3点ほど決定的な理由があると思います。
1、そもそも待遇が悪いから。
2、携帯電話使用不可だから。
3、家族にすら潜水艦に乗っていることを話すことができないから。
1点目に関しては、そもそも潜水艦の乗員に対する手当があまり良くないです。
※参考:潜水艦勤務の魅力
現時点では、 各階級の現在の号俸の45.5%の手当があるとのことです。
私はこれでは話にならないとすら思っています。
なぜならば、潜水艦に乗るということは閉鎖空間で、いつ仮想敵国の奇襲を受けるか予想できないという過酷な環境なのです。
せめて、各階級の現在の号俸の80%に引き上げるのが妥当でしょう。
2点目に関しては、現代の情報化社会の問題と言えます。
要するに、いつでも携帯電話を操作できる環境に慣れた情報化社会の人間にとっては、情報遮断された潜水艦は苦痛なのです。
恋人、家族、友人、それらと連絡が取れない期間が潜水艦の乗員だと長過ぎるのです。
私個人としても、ITエンジニアという職業ということもありますが、スマホをいじり尽くしています。
それが一定期間(1週間から2週間程度)とは言え、継続すると考えると苦痛と言えます。
3点目に関しては、潜水艦に乗っているというのは極めて重要な安全保障上の機密事項になります。
潜水艦に乗って任務をしているということを家族にすら言えないのです。
これが何の問題になるのかと疑問に思う方もいらっしゃると思います。
分かりやすく申し上げれば、浮気や不倫を疑われてしまうから問題なのです。
とある既婚の潜水艦の乗員(当然のことながら、海上自衛隊の自衛官)が任務といって詳細を告げずに出かけていって、2週間連絡が付かない。
奥様や旦那様からしたら、浮気や不倫を疑ってしまう状況がやむを得ず発生してしまい、それが家庭内不和を引き起こすのです。
家庭を大事にするような常識人ほどこれは嫌がるでしょう。
これらの問題を解消するために、無人機の開発を積極的に推し進めるべきなのは当然として、地道にやるべきことがあります。
クルー制の導入と待遇改善
省力化によって1艦あたりの乗員数減らすことを進めても潜水艦の数は減少せざるを得ないだろう。
潜水艦の隻数を例えば12隻、10隻に減らして他国でも導入されているクルー制を導入すべきだ。
クルー制とは1隻の潜水艦に2組の乗員を用意し、交互に乗り組むシステムだ。
こうすれば現状は帰港後、遊んでいる潜水艦を有効利用でき稼働率を上げることができる。
潜水艦の数を減らすということには反対です。
けれども、清谷 信一のクルー制導入には賛成です。
なぜならば、潜水艦の乗員になるデメリットを軽減できるからです。
実際に潜水艦に乗り、任務を遂行する頻度が仮に3割から5割ほど削減できると考えればどうでしょう。
スマホで友人、恋人、家族と連絡が取れ、浮気や不倫を疑われることも少なくなります。
問題は人件費が増え、人員確保に本腰を入れる必要があるということです。
これにも解決策はございまして、結局のところ待遇改善で人員を確保するべきです。
「防衛省の職員の給与等に関する法律」の一部改正案を衆参両院で可決成立させる他ありません。
クルー制に関して具体的には、潜水艦2隻に対して3組の乗員を確保することを目指した方が良いのではと考えます。
率直に申し上げて、クルー制の導入に当たり、どれくらいの乗員を確保するべきなのかという点は議論が分かれるかと。
医療忍者を用意しない忍界大戦か
さらに申せば護衛艦も潜水艦も本来定員に入っている医官はまったく乗り組んでいない。
例外は海外任務のときだけだ。医官の不足は深刻であるが、これも長年放置されて改善していない。
それは戦争を想定していないのか、戦時の人的損害に無頓着ということだ。
これではかつての帝国海軍以下である。
これまた木原防衛大臣、酒井海幕長に尋ねたが、具体的な対策を聞くことはできなった。
潜水艦の定員に医官が全く乗り込んでいないという点を清谷 信一は問題視しております。
医官が乗り込んでいないのは由々しき問題ですから、積極的な人員確保を目指すべきでしょう。
当然のことながら、給料はマシマシでお願いしたいですね。
NARUTOという忍者漫画で5代目火影の綱手が忍界大戦中に3代目火影に医療忍者を小隊に随伴させる意見を出したシーンを思い出します。
人命軽視というのは、我が国日本の駄目なところですね。
有事を想定してしないのも、日本政府の怠慢と言えます。
この点だけは清谷 信一を全面的に支持します。
財政破綻なんてしないから心配すんな
数年前に6兆円もなかった防衛費が現在は8兆円弱まで増えている。
そのうち約5000億円は建設国債という借金である。
日本は国と地方合わせればGDPの2倍以上の借金を抱えており、いつまでも「借金軍拡」を続ける国力はない。
同時に人的な余裕もない。
そうであれば早急に費用対効果の高い潜水艦運用と、国産潜水艦技術の維持のために抜本的に政策と運用を見直す必要がある。
そもそも、防衛費のために建設国債を発行するのはおかしな話なので、防衛国債を発行するべきでしょう。
使途明確で明朗会計というのは、近代国家の最低限の責務と言えます。
それはさておき。
清谷 信一は我が国日本が財政的に危機的状態であると危惧しているようです。
変動相場制を採用し、自国通貨発行権を保有する中央政府に財政的予算制約は存在しません。
日本円を発行できる(硬貨は財務省造幣局で製造)日本政府が、お金に困るなんてことはあり得ません。
財政破綻論が破綻しているという事実を受け入れていただき、そこから防衛体制に対する戦略を考えて欲しいと切に願います。
以上です。