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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2024年1月27日(令和6年1月27日)
トルコはパイプラインの収束地
ロシアやカスピ海諸国、そして中東からの天然ガスがパイプラインを通じてトルコを経由し、そこからヨーロッパ諸国へつながっています。
引用元:「エネルギー地政学」で最重要国となったトルコ
現在、トルコには天然ガスパイプラインが集中しており、トルコ回廊(トルココリドー)とも呼ばれています。
地政学の勉強の一環として、中東地域のトルコに着目すると見えてくることがあります。
ロシアやカスピ海諸国、中東諸国からの天然ガスパイプラインがトルコに収束しているのだそうです。
海上交通路(シーレーン)の収束点をチョークポイントと呼びます。
一方で、パイプライン収束地であるトルコはトルコ回廊(トルココリドー)と呼ばれているとのこと。
仮に、天然ガスを消費している国家がトルコとの外交関係が悪化すると、経済的打撃が来るかもしれません。
なぜならば、トルコがパイプラインを封鎖または破壊したら、天然ガスを安価かつ大量に獲得できないからです。
したがって、トルコは欧州諸国に対して強気の外交を展開できます。
以前の記事でもご紹介しましたが、トルコはスウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加盟に反対していました。
アメリカが主導的な役割を果たしているNATO(北大西洋条約機構)への加盟に、アメリカの意向に逆らってまで反対していました。
最終的には、トルコがスウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加盟に賛成することになりました。
しかしながら、トルコは自国の要求をスウェーデンに呑ませることに成功しました。
背景には、NATO(北大西洋条約機構)が全会一致で物事を決めないといけないルールだったということもあります。
それだけではなく、トルコの地政学的優位性も強硬な外交姿勢の堅持に一役買っていたようです。
参考記事:北大西洋条約機構が北方拡大へ。トルコは外交巧者でロシアは外交下手
さらに言えば、自国の要求をアメリカに吞ませることにも成功していたようです。
トルコがアメリカの戦闘機を調達していた
米政府は26日、トルコに最大40機の戦闘機F16を売却すると発表した。
引用元:米国、トルコに戦闘機F16売却へ NATO拡大容認で
トルコがスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認め、引き換えに米国がトルコの要望に応じた。
アメリカ連邦政府はトルコに最大40機の戦闘機F16を売却すると発表がありました。
トルコ外交に少々詳しい人間からすると驚きを隠しきれません。
なぜならば、トルコは以前、防空ミサイルをロシアから購入することで、アメリカから制裁を喰らった国だからです。
参考記事:米国がロシア製ミサイル導入のトルコに制裁
仮想敵国の防空ミサイルを購入するということは、敵の戦闘機と味方の戦闘機を識別しなければなりません。
ロシアの防空ミサイルにトルコが保有する戦闘機の情報をインプットして、撃墜しないように設定します。
したがって、アメリカもしくはアメリカとの共同開発した戦闘機の情報がロシア側に漏洩する可能性がございました。
この一件が引き鉄となり、トルコは米国防総省のF35ジェットの共同開発プロジェクトから外されたという経緯がございます。
しかしながら、トルコはスウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加盟を認める代わりとして戦闘機を要求していたようです。
これが認められたということは、それほど背に腹は代えられないような外交問題だったと言えます。
ちなみに、トルコはF16を既に多数保有していたのですが、追加購入し、アップグレードも行うとのことです。
※参考記事:米、トルコにF16売却 スウェーデンのNATO加盟承認で
しかも、F16を手に入れられない場合に備えて、ユーロファイター調達にも動いていたらしいですから、外交巧者と言えましょう。
参考記事:トルコ、欧州製戦闘機購入を協議 F16調達不透明で=関係筋
航空優勢を確保したいトルコの執念が見えます。
NATOは北方拡大へ
スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟が実現する見通しとなった。
引用元:スウェーデン、NATO加盟へ ハンガリー首相が容認表明
ハンガリーのオルバン首相が24日、スウェーデンの加盟を認めると表明した。
23日にトルコ議会が加盟を承認し、未承認の加盟国はハンガリーのみとなっていた。
NATO(北大西洋条約機構)への加盟を目指すスウェーデンは、トルコの反対とハンガリーの反対で加盟が遅れていました。
しかしながら、親ロシア派と目されていたハンガリーのオルバン首相がスウェーデンの加盟を認めると表明しました。
これでNATO(北大西洋条約機構)の北方拡大は完成したことになり、ロシアが侵略できない国家がさらに増えました。
ウクライナとロシアの戦争(宇露戦争)は、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を阻止する目的もあったと言われています。
大陸国家(ランドパワー)であるロシアにとっては、これ以上仮想敵国の軍事同盟に加盟した国家と国境を接したくはないでしょう。
なぜならば、広大な国土を持つロシアは常に外敵に取り囲まれており、緩衝地帯(バッファーゾーン)を潜在的に欲しているからです。
また、ロシアにとって裏庭のような地域が敵に味方するのは精神衛生上耐えられなかったとも言えます。
しかしながら、侵略戦争を仕掛けるというのは悪手としか言いようがありません。
敵の軍事同盟が拡大する千載一遇の機会を与えてしまっては、ますますロシアの安全保障環境は悪化します。
トルコとハンガリーというロシア寄り国家がいたとしても、着々とロシア包囲網を形成するアメリカが上手でした。
トルコとイランが接近か
イランが「反イスラエル陣営」づくりを進めている。
引用元:イラン、トルコ取り込み
パレスチナ自治区ガザをめぐってイスラエル批判を強めるトルコに接近する。
イラン精鋭部隊の幹部殺害などが続くなか、国内外に強気の姿勢を示す狙いもある。
イスラム教の国とは言え、世俗派のトルコと、イスラム教シーア派のイランが対イスラエルで接近している模様です。
ガザ地区を支配していたハマスがイスラエルに奇襲を仕掛けて、民間人を多数殺害しました。
しかしながら、イランとライシ大統領とトルコのエルドアン大統領はイスラエルのガザへの反撃を非人道的と非難しています。
よく日本の真珠湾攻撃と比較されますが、根本的に違うと言えます。
日本はアメリカへの軍事基地に対する奇襲を行い、ハマスはイスラエル国内の民間人を殺害したのです。
したがって、私はイスラエルの反撃は止むを得ない部分が大きいのではないかと思っています。
もちろん、パレスチナ人が土地を奪われた件に関しては同情しますけれども、さすがに今回の奇襲は擁護できません。
私のようなどちらかと言えばパレスチナ寄りの人間ですら擁護しにくいことをやってしまっては駄目でしょう。
そんな中、イランとトルコが接近するというのは要警戒するべきと言えます。
なぜならば、トルコがイスラエルと外交関係を悪化させたならば、イスラエルの背後にいるアメリカとも関係悪化してしまうからです。
今後もトルコ外交を注視したいと思います。
以上です。