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反逆する武士

世界経済

バイデン大統領がインフレ対策に本腰か。設備投資で生産性向上を頼む

投稿日:

アメリカ

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2021年12月11日(令和3年12月11日)

アメリカの消費者物価指数がまたも上昇していることが判明

米労働省が10日発表した11月の消費者物価指数(CPI、1982~84年=100)は前年同月比の上昇率が6.8%と、約39年ぶりの高水準に勢いを強めた。

引用元:米消費者物価11月6.8%上昇 39年ぶり水準

アメリカの労働省が発表した消費者物価指数は、前年同月比の上昇率が6.8%と高水準でした。
前年においては新型コロナウイルスの感染拡大に伴うデフレ基調でしたので、やむを得ないとは言え、一時的なインフレということではないということがはっきりしました。

いわゆる個人投資家界隈で盛り上がっていたアメリカの消費者物価指数の発表なのですが、市場予測と乖離しているわけでもないので、とくに問題無く市場としては織り込み済みのようです。
株価が下落ということにはなりませんでした。

拙ブログに初めてお越しになられた読者様のためにも、今一度復習させていただくと、アメリカの消費者物価指数は2つございまして、消費者物価指数(CPI)とコア消費者物価指数(CPI)がございます。

CPIは簡単に言えば、消費者が物やサービスを購入する際の価格の総合指数のことです。
企業間の取引の価格の総合指数とはまた別です。

コアCPIは、食料品やエネルギーを除いた商品とサービスの価格変動を測定する指標であり、景気の影響以外の要因で価格変動しやすい食料品やエネルギーを除いているので、費用増大型物価上昇( コストプッシュ・インフレ )以外の要因で物価上昇していると判断する材料となっています。

我が国日本の消費者物価指数とコア消費者物価指数とコアコア消費者物価指数とは用語が同じでも意味が違うので留意していただければ幸いに存じます。

さて、本題に戻りましょう。

アメリカの消費者物価指数(CPI)は対前年同月比6.8%です。
また、アメリカのコアCPIは対前年同月比4.9%です。

※参考:米国 コア消費者物価指数 (前年比) - Investing.com

2021年9月のCPIとコアCPIの差は1.4%であり、同年10月は1.6%もの乖離がございました。

2021年11月はなんと1.9%にも拡大しており、費用増大型物価上昇(コストプッシュ・インフレ)の様相を呈しているのです。

ここに、半導体不足や物流問題なども加わり、アメリカの物価上昇は形成されていると思われます。
費用増大型物価上昇 (コストプッシュ・インフレ) と供給低下型物価上昇(サプライダウン・インフレ)が緩やかに同時発生しているのではないかと推察します。

※参考記事:アメリカ経済は様々な問題で物価上昇と消費マインドの冷え込みが発生

バイデン大統領がインフレファイターへ変貌か

バイデン米大統領は10日、11月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比の上昇率が約39年ぶりの高水準に達したことを受けて声明を発表し「物価やコストを下げなくてはならない。政権の最大の目標だ」と強調した。

引用元:米大統領、インフレは今後「鈍化」 39年ぶり上昇率で

これまでアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長のインフレ認識の発言はかなり市場を賑わせてきましたが、バイデン大統領までもがインフレファイター宣言をするとは想定外でした。

そのためにも原油の市場放出などを決断して、主要各国に対しても備蓄していた原油を放出するように要請したわけですから、インフレ対策に本腰を入れるのではないかと推察します。

問題はどのような手段でインフレ退治するのかという点であり、完全雇用を損なってまでインフレ対策するのかという点もこの記事の中で考えてみたいと思います。

供給低下型物価上昇と費用増大型物価上昇の違い

供給低下型物価上昇とは、何らかの要因で生産能力が低下する場合に発生する物価上昇のことです。
例えば、物やサービスを低下する際の部品(半導体など)が存在しないため、物やサービスを生産することができず、物不足(自動車)になってしまう場合がこれに該当します。

また、世界的な物流が寸断され、大量の荷物を受け入れるだけの能力がない場合もこれに該当します。

したがって、民間企業の供給能力の強化を待つか、供給能力を強化する民間企業を政策的に後押しすることになります。

例えば、設備投資減税や補助金支給で、供給能力を強化した民間企業に恩恵を与えるということになります。

この場合、悩ましい問題に直面します。
民間企業の設備投資によって供給能力は長期的には強化されますが、短期的には需要増大になりますので、短期的には物価上昇を助長することになるかもしれないのです。

例えば、半導体を生産するために工場を建設するということになった場合、工場を建てるための資材や労働者にお金を支払うことになりますが、それは需要増大に該当します。
どう考えても短期的には需要増大型物価上昇が上乗せされてしまいます。

費用増大型物価上昇とは、天候不良や投機資金の流入などの景気変動以外の要因で食料品価格が上昇したり、産油国の減産や投機資金の流入などで景気変動以外の要因で資源価格が上昇する場合の物価上昇のことです。

したがって、費用増大型物価上昇を抑制するためには、産油国に原油増産や備蓄原油の放出を行ったり、投機資金の流入を抑制したり、備蓄していた食料品を放出するということが必要です。

この場合、農業関係者や原油関係者などに所得保障などを行う必要がございますが、食料品やエネルギー価格を政策的に下落させることで、雇用が失われるというデメリットは少ないと言えます。

むしろ国民全体にとっては、食費は浮きますし、暖房のための灯油や自動車のためのガソリンの価格が下落するので生活が楽になることも多いと言えます。

政策金利の引き上げや量的緩和の段階的縮小はインフレ対策にならない

さて、上記の内容を熟読していただいた上で、結局どうすればいいのかという点で、バイデン政権は誤ったことをしているわけではないようです。

インフラ投資を行い、物流を効率化させるような布石を打ってますし、原油放出もしているので、100点満点ではありませんが合格点と言えるでしょう。

私が懸念しているのは、物価上昇を抑制するための手段として、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利の引き上げや量的緩和の段階的縮小に対する期待感が大きいということです。

そもそもアメリカの政策金利とはFF金利のことでございまして、要するにFRBが民間金融機関間の準備預金(日本における日銀当座預金のようなもの)の貸し借りの短期的な利子率を引き上げるということでございます。

量的緩和の段階的縮小とは、民間金融機関から国債などを買い上げて、民間金融機関の準備預金を増やすということを段階的に止めることです。

我々の保有している銀行預金とは別物の準備預金が増減しても、準備預金の利子率が増減しても我々の預金は変動しません。

それでインフレ対策になりますでしょうか。
それで資源価格や食料品価格が下落するのでしょうか。

それで物流の混乱が抑制され、個人消費が冷え込みますか。
半導体不足が解消されるのでしょうか。

政策金利の引き上げや量的緩和の段階的縮小によって引き起こされるのは、株式投資家や債券投資家などの心理状態の悪化だけです。

民間金融機関の準備預金という数字が変動するだけでは、現実世界に影響は与えられません。

法人税増税と設備投資減税で生産性向上を地道に行うしか方法がない

物価上昇を抑制するためには、法人税増税などを行い、同時に設備投資減税も実施することで、生産性向上を行う企業には減税を、生産性向上をしない企業に対しては増税を行うことで、生産性向上を図るという地道な努力を継続する他はありません。

物価上昇抑制に特効薬は無く、泥臭い生産性向上をやるのかやらないのか、それだけです。

ある意味、健全な資本主義に回帰しているのがアメリカ経済のようです。

以上です。

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