大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2023年3月21日(令和5年3月21日)
本日は逆イールドが発生したアメリカ経済で金融不安定性が高まっている件です。
備忘録的な性格が強い記事になります。
したがって、温かい目で見ていただけると幸いに存じます。
暗号資産がきっかけで破綻したシルバーゲート銀行
米銀持ち株会社シルバーゲート・キャピタルは8日、傘下銀行を自主的に清算すると発表した。
引用元:苦境の仮想通貨、投機ビジネス縮小 FTX取引銀行は清算
発表文によると、2022年末時点で約63億ドル(約8600億円)の預金は「全額返済する」計画と説明している。
(中略)
シルバーゲートは積極的に関連企業の預金を受け入れ、仮想通貨の交換所や投資家同士で24時間ドル送金が可能な独自の決済システムも提供してきた。
ただ、顧客資産を流用していたFTXが破綻すると仮想通貨に特化する事業モデルが裏目に出て、預金が急減。
引き出しに対応する有価証券投げ売りに伴う売却損で資本は毀損し、経営再建を断念した。
今回の金融不安の発端は、暗号資産の取引大手であるFTXトレーディング破綻です。
暗号資産(ビットコインなど)交換業大手FTXトレーディングの取引相手であったシルバーゲート銀行が破綻したようです。
チューリップバブルの様相を呈していた暗号資産に特化した事業モデルだったシルバーゲート銀行は脆弱さを抱えていました。
したがって、いわゆるカウンターパーティ・リスクを嫌って、預金引き出し要求が多発しました。
破綻するかもしれない銀行に大事なお金を預けるなんて狂気の沙汰ですから当然のことです。
その結果、預金引き出しに伴い、準備預金が足りなくなり、準備預金を確保するため有価証券の投げ売りをしました。
しかしながら、有価証券の投げ売りの結果、多額の評価損を計上しなければなりませんから、経営不安が加速したようです。
このシルバーゲート銀行の破綻時点(2023年3月9日)では金融システム全体へ波及する可能性は低いと思われていたようです。
いわゆる業界関係者の「問題ない」という発言や予想ほど無意味なものはありません。
暗号資産の価値の急落と国債利回りの急激な上昇が引き金となった
14年以降、22年9月までに約30倍に膨らんだ預金は、昨年11月のFTX破綻を機に減少に転じた。
引用元:FTX破綻、銀行に波及 取引先の米銀は預金7割減
仮想通貨の相場が急落するなか機関投資家は米国債など安全資産へ資金を移すため預金引き出しに動いた。
同行がFTXから預金を受け入れていたことから不安に駆られた預金者の引き出しもあったもようだ。
暗号資産の価格が2021年11月以降は右肩下がりに急落しておりました。
なぜならば、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)による政策金利の引き上げが織り込まれ始めたからです。
実際、2022年3月から政策金利の引き上げが開始され、1回のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.75%も引き上げられることが連続しておりました。
政策金利(FFレート)の引き上げにより、安全資産とされるアメリカ国債の利回りが高まりました。
債務不履行(デフォルト)の怖れがほぼ無い国債にそこそこの利子が付いていることになります。
したがって、暗号資産を売却して、国債を購入し、ローリスク・ミドルリターンを得ようという大手ヘッジファンドが増えるのは当然です。
その結果、FTXトレーディングからお金が離散して資金繰りが悪化したようです。
金融引き締めに舵を切ったFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が金融不安定性を高めたようです。
CDSやサブプライム・ローンといったものではなく、暗号資産が発火点となりました。
それがリーマンショック時とは異なる点と言えます。
私が怖れているのが、暗号資産の急落がサブプライムサブプライム・ローン問題と同じような立ち位置になることです。
スタートアップに集中融資していたシリコンバレー銀行が破綻
米テクノロジー企業への融資で知られ、米西海岸シリコンバレーのエコシステムの中核を担ってきたシリコンバレーバンク(SVB)が10日、経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入った。
引用元:シリコンバレー銀行なぜ破綻 テック金融の要、不安連鎖
(中略)
預金が増える一方、十分に資金調達していたスタートアップへの融資需要は低かったため、SVBは運用先として住宅ローン担保証券(MBS)など有価証券の購入にあてた。
米連邦準備理事会(FRB)が22年3月に利上げを開始し、急な金利上昇に伴い保有する債券の含み損が想定を上回って拡大。
含み損を考慮するとすでに実質債務超過の状態にあったとみられている。
2023年3月10日にシリコンバレー銀行が経営破綻しました。
いわゆる取り付け騒ぎになった模様です。
新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停止の対策として、巨額の財政出動と量的緩和に動いていた反動が出たようです。
スタートアップ(主にIT系)企業に対する融資需要が低く、MBS(ローン担保証券)を購入していたようです。
IT系の企業はちょっとしたバブル(リモートワークの影響など)でしたが、その反動があり、政策金利の引き上げで債券価格は軒並み下落トレンドでした。
したがって、スタートアップへの融資に特化しているシリコンバレー銀行は経営が悪化、預金引き出し要求が増えました。
預金引き出しに応えるために、準備預金が必要となり、債券を投げ売って準備預金を確保しようとしたのです。
その結果、多額の損失が計上され、不安が増大して預金引き出しが増えるという悪循環が発生しました。
しかも、著名投資家ピーター・ティール氏率いるファンドなどがシリコンバレー銀行から預金を引き出すように呼びかけたことも拍車をかけたようです。
典型的な取り付け騒ぎであり、SNS時代においては情報伝達が早いですし、アプリやネット上で預金引き出し操作できます。
したがって、急な破綻劇となりました。
シグネチャー銀行の破綻
ニューヨーク州金融監督当局は12日、同州地盤の米銀シグネチャー・バンクの事業を同日付で停止したと発表した。
引用元:米銀29位・シグネチャー銀行も破綻 預金全額保護
10日に経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)に続く破綻となる。
(中略)
シグネチャー・バンクは暗号資産(仮想通貨)関連企業との取引で知られ、資産規模は2022年末時点で約1103億6000万ドル、預金は約885億9000万ドルあった。
仮想通貨関連の取引が多かったシルバーゲート銀行の自主清算発表やSVB破綻を受けて、シグネチャー・バンクの信用不安も高まり預金流出が加速していたようだ。
暗号資産関連企業との取引相手であったシグネチャー銀行が2023年3月12日に経営破綻しました。
いわゆるカウンターパーティ・リスクを毛嫌いした預金者が預金の引き出しに動いてしまい、取り付け騒ぎになりました。
要するに、破綻しそうな金融機関や企業との取引があった企業も危なそうだからという連想ゲームが始まったということです。
連鎖破綻が加速していました。
スモールサイズ・リーマンショックになる可能性すらあったことになります。
預金者は全額保護されるという政治的決断が下される
経営破綻したアメリカの「シリコンバレーバンク」は13日から営業を再開し、FDIC=連邦預金保険公社の保護の対象となっている預金の支払いに応じることにしています。
引用元:米 シリコンバレーバンク破綻 預金残高90%近くが保護の対象外
ただ、預金残高の90%近いおよそ1560億ドル、日本円で21兆円余りが保護の対象外で、今後、顧客の企業などにどれだけの預金が戻されるかが焦点となります。
シリコンバレー銀行が破綻することで、何が困るかと申しますと、預金が保護されず金融不安が増大することです。
アメリカ連邦預金保険公社の保護の対象となっている保護上限額が1口座当たり25万ドルなのですが、その保護対象外が21兆円分もあるとのこと。
最悪の場合、景気後退の直接的原因になるかもしれず、金融危機になるかもしれませんでした。
イエレン財務長官は危機感を持って即断即決した模様です。
米財務省と米連邦準備理事会(FRB)、米連邦預金保険公社(FDIC)は12日、米銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻について共同声明を公表した。
引用元:米財務省など「シリコンバレー銀行の預金、全額保護」
イエレン米財務長官は預金者を完全に保護する方法で破綻処理を完了する措置を承認した。
FRBが銀行の資金繰りを助ける新たな枠組みを導入する。
FRBによると、新たに導入するのは「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」。
金融機関を対象に、米国債や住宅ローン担保証券を担保として、最長1年の融資をする。
政府の基金から最大250億ドルを利用できるようにする。
FRBが「最後の貸し手」となって金融システムを守る機能を拡充する。
アメリカ財務省とFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)がシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の破綻を受け、預金の全額保護に踏み切りました。
新たに導入するのは「バンクタームファンディングプログラム(BTFP)」と呼ばれるものです。
SVBの破綻を招いたような損失を発生させることなく、価格の値下がりした資産を現金化する手段を金融機関に提供するため、最長1年となる融資の担保価値は額面で評価される。
引用元:SVB破綻後の不安連鎖阻止へ、米当局が預金全額保護-緊急融資も
米利上げで値下がりした米国債など、価値が目減りした証券を担保に銀行は通常より多く借り入れできる。
政策金利の引き上げに伴い、債券価格が下落しているため、債券を売却すると損失を計上する必要があります。
その損失計上が預金者や市場関係者の不安を増大させ、取り付け騒ぎに発展している現状があります。
したがって、「バンクタームファンディングプログラム(BTFP)」にて時価ではなく額面評価してお金を融資するという仕組みを整えた模様です。
市場で債券を売却して損失を計上するよりも、債券を担保として差し出してお金を引っ張った方がお得な状況を創り出したことになります。
金融危機における初動としては悪くない決断と言えましょう。
ここまでは良かったのですが、グローバル経済の弊害が発生してしまったようです。
残り火が欧州の金融機関に飛び火してしまったので、これで安心とはなりませんでした。
クレディ・スイスが破綻寸前でスイス国立銀行に助けられる
クレディ・スイス・グループの経営問題が浮上しています。
引用元:クレディ・スイス、なぜ経営不安? UBSが買収交渉
同社は16日、スイス国立銀行(中央銀行)の資金供給策を使って最大500億スイスフラン(約7兆1000億円)を調達する用意があると発表しました。
※参考記事:日銀と金融庁が動き、クレディ・スイスが巨額損失を計上し責任者更迭
アルケゴス・キャピタル・マネジメントにレバレッジを供与していたことで巨額損失を出したクレディスイスが経営危機に陥りました。
あまりにも金融不安が高まり、株価も一時暴落しておりました。
したがって、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行が約7兆1000億円の特別融資を行う用意があると発表して、市場に安心感を与えようとしております。
ダーティマネーが集まるクレディスイスが破綻してしまったら、いろいろ闇深いことになっていたのではないかと推察します。
UBSがクレディスイスを買収
スイスの金融機関最大手UBSは同2位のクレディ・スイス・グループを買収する。
引用元:UBS、クレディ・スイスを買収 4200億円で合意
スイス政府とUBS、クレディ・スイスが19日発表した。
買収額が30億スイスフラン(約4260億円)相当となる株式交換で実施する。
スイスの金融機関最大手のUBSがクレディスイスを買収することになりました。
UBSの株価が下がってしまい、問題を先送りされただけのような気がします。
けれども、一旦は金融危機に発展する可能性が低下したこともまた事実。
比較的安全な資産が一気に無価値化して動揺が走る
スイスの金融機関大手クレディ・スイス・グループは19日、同社が発行した劣後債の一種である「AT1債」について、約160億スイスフラン(約2.2兆円)分の価値をゼロにすると発表した。
引用元:クレディ・スイス、2.2兆円分のAT1債が無価値に
株式より低リスクとされる社債での異例の巨額損失発生となる。投資家心理が悪化して、世界の社債市場での売りに波及する可能性もある。
債券にも様々な種類がございまして、優良社債から国債、ハイイールド債やジャンク債と様々な呼び名がございます。
その中でクレディスイスが発行している「AT1債」が無価値化してしまうという驚愕の発表がなされました。
株式はまだ無価値化していないのに、債券が無価値化するというのは債務の優先順位からしておかしいわけでして。
クレディスイスの「AT1債」を保有している投資家は激おこぷんぷん丸のようです。
金融不安は増大するようですな。
最後に 私の予言が的中
実は、進撃の庶民で発表した「逆イールド」の記事で、金融が不安定化するのではないかと予想しておりました。
予言的中ってやつでして。
まぁ、わかる人にはわかる内容ということで。
※参考記事:アメリカで発生した逆イールドが金融不安定性を高め景気後退に突入か
以上です。