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反逆する武士

現代貨幣理論

『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』書評

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大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2023年3月29日(令和5年3月29日)

ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろうを読んでみた

森永卓郎さん(経済アナリスト)推薦!増税なしで国民が一律給付を受け続ける。
誰もが幸せになる経済社会が実現可能なことを本書は教えてくれる。
無条件・個人単位・継続的現金給付のベーシックインカムと通貨発行権活用による国債発行で積極財政をとなえる話題の経済理論MMT(現代貨幣理論)を統合する世界。
税収を財源としないお金の仕組みは、人々がそれぞれのニーズを求めた生き方を選択するために必要十分な所得を保証。
これまでのベーシックインカム論をさらにパワーアップした最新理論をわかりやすく解説

引用元:『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』のAmazonページより

まず、簡単にこの書籍を紹介させていただきます。

著者はスコット・サンテンスというアメリカ人です。

彼は現代貨幣理論を支持しており、ベーシックインカムの支持者です。

内容的には現代貨幣理論における租税貨幣論と税収が無くとも政府支出は可能という点を説明しております。

また、現代貨幣理論における雇用保証プログラム(job guarantee program)を批判しております。

内容的にはかなりコンパクトにまとまっており、アメリカ国内政治の現状をベースとして簡単に経済を学べます。

ベーシックインカムを導入した後に、過度なインフレになるのではないかという批判に対する反論は秀逸でした。

したがって、現代貨幣理論とベーシックインカムを学ぶ上で極めて有用な書籍なのではと思いました。

以下、一部を引用させていただきながら、説明させていただければと思います。

需要増大型物価上昇は緩やかになる理由

需要の増加によって、使う資源の総量が減る可能性もあります。
これは直感に反することかもしれませんが、人々は使えるお金が増えると、あるモノの購入量を減らす場合もあるのです。
経済学者はこのようなモノを劣等財あるいは下級財と呼んでいます。

引用元:『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』pp32より

ベーシックインカムを導入する場合、過度なインフレになる危険性があります。

これはベーシックインカムに対する本質的な批判であり、ステファニー・ケルトンも主張していたことです。

本書の著者であるスコット・サンテンス氏(以下敬称略)は物価上昇を心配しなくても良いと考えているようです。

例えば、人々へ直接給付されることで、ケーキの需要が拡大したとしても、必ずしも価格が上がるわけではありません。

1日で生産できる以上の需要があったとしても、数量限定の受注生産に切り替えることで値上げせずに供給することができます。

一時的に需要が急拡大した場合では、このような方法が有効でしょう。

また、原油価格が上昇した場合におけるシェールオイルの採掘が活発化したことを思い出すべきです。

原油価格高騰のおかげで、シェールオイルの採掘の採算が合い、供給が増えることで価格が抑制されました。

さらに言えば、上記引用元にもございます通り、購買力が強化されると需要が減少する物品があります。

これを劣等財または下級財と呼びます。

お金が無くカップラーメンばかり食べていた人間が、家系ラーメンや博多豚骨ラーメンのお店でラーメンを食べるようになったとします。

この場合、カップラーメンが劣等財または下級財ということになります。

したがって、カップラーメンの需要は減少することになり、物価下落圧力が発生します。

さらに付言するならば、現代ではネットでのサービス購入も主流ですので、限界費用が限りなくゼロに近いのです。

ウイルス対策ソフトを購入する場合、会社で大量に購入する場合でも、個人で購入する場合でも生産費用はそれほど変わりません。

音楽サイトでの楽曲ダウンロードも同様ですね。

したがって、物価は上がりにくい経済環境が整えられていると言えます。

労働するのか貧困に陥るのかの選択肢

基本的ニーズが満たされた人々が、楽しいことや贅沢をするために有給労働をするか、あるいは無償の仕事として、愛する人のケアやコミュニティでのボランティア活動など、おカネよりも価値のあることを追及するのかを、選択できる状況にするために、BIはJGの前に存在する必要があるのです。
BIがなくてJGがある状態は、基本的なモノを取り上げられた人々が、おカネのために働くか、困窮するかという「選択」を迫られる、とんでもない状態です。

引用元:『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』pp61より

雇用保証プログラム(Job Guarantee Program)という現代貨幣理論に基づく政策があります。

就業保証プログラムという名称でも呼ばれており、以下に参考記事のリンクを貼り付けておきます。

※参考記事:就業保証プログラムのデメリットと制度設計を考えると厳しい意見あり

簡潔に言えば、働きたい人全てに対して雇用を保証することで、非自発的失業を無くすことを目的としています。

※参考記事:就業保証プログラムの実現可能性について懐疑的な現代貨幣理論理解者

それは現代貨幣理論の支持者の多くがお気に入りの政策なのです。

しかしながら、私のような実務的かつ政策に精密さを求める人間にとっては、穴ぼこだらけのチーズ・ポリティクスとしか思えません。

著者も私と同様に雇用保証プログラムには否定的(懐疑的)なようです。

労働意欲がある人間だけに対象者を限定して、労働するのか困窮するのかの選択を強いられる制度と批判しているのです。

確かに、そういった側面はありますよね。

労働するのか、労働しないのかに関係なく、お金を支給するべきなのです。

経済的に豊かになるのか、質素な暮らしのままなのかを選択する社会の方が健全なのではないでしょうか。

中央銀行デジタル通貨でお金を配るという方法

通貨政策の能力を強化するために、もう一つ私が提案したいのは、連邦準備(Fed=アメリカの中央銀行)が、個人連邦準備口座を通じて、議会の決定とは無関係にすべての人々におカネを渡せるようにすることです。
そして、経済状況に応じてその金額を設定したり、増やしたり、減らしたりできる権限を、連邦準備に与えることです。

引用元:『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』pp87より

欧米系の知識人が使う「Fed」というのはアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)のことであり、中央銀行のような組織体を指します。

したがって、この場合の「Fed」に関してはアメリカの中央銀行と訳すのが適切だったのではないかと考えます。

それはさておき。

中央銀行の個人口座にお金を振り込むことで、中央銀行の権限強化した方がいいのではないかという提案をされているようです。

個人的には、事務的なハードルが高いのではないかと推察します。

なぜならば、中央銀行に個人の口座を開設する事務的能力と管理能力が少なくとも現時点では備わっていないからです。

例えば、日本銀行の場合、口座開設が可能な日本国民なのか、反社会的勢力に属する人間なのか判定できるのか疑問です。

さらに言えば、物やサービスを購入する際の決済はどうすればいいのでしょうか。

クレジットカード各社に対して、日本銀行の個人口座を引き落とし口座に指定すればいいのでしょうか。

もしくは日本銀行の支店もしくはATMで現金を引き出すことで対処するのでしょうか。

多岐に渡る事務的な問題が発生するでしょう。

したがって、中央銀行の個人口座にお金を振り込む件は、もっと精密な議論が必要だと思います。

まずはお金を支給してその後に税金で回収する

ターゲティングは不必要な官僚主義をもたらし、困窮者を取りこぼし、恥の烙印(スティグマ)と不信感を生み、限界税率(追加的に稼いだ1ドルにかかる税率)をものすごく高くするだけです。
みんなにおカネを与えて、税金で調節しましょう。

引用元:『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』pp91より

ここでターゲティングという単語が出ましたが、これは社会保障の支給対象を絞ることを指します。

我が国日本においても、生活保護がその代表例ですが、ターゲティングが行われております。

しかしながら、捕捉率は低くく、恥の烙印と不信感を生み、行政費用が増える原因となっていることは事実です。

したがって、日本国民に対して一律にお金を配り、所得税で調節するべきなのです。

具体的には、ベーシックインカムで支給したお金を所得税の対象とします。

その結果、高額所得者からより多くの税金を徴収し、インフレ抑制と格差是正が可能となります。

年末調整や確定申告で毎年行っていることなので、事務的な手続きはそこまで面倒にはならないでしょう。

私も80%はMMTerである

JGは失業者に政府が仕事を与える政策ですが、これも失業者に「的を絞った」政策であり、政府が認める形で時間的に拘束されない限り、おカネを渡しません。
これでは、失業者というわけではないけれども生活が苦しい人たち(例えば、勉強時間の必要な学生や、子育てや介護をすべき家族がいる人々、自営業の人々など)の苦境を救うことができません。

引用元:『ベーシックインカム×MMT(現代貨幣理論)でお金を配ろう』pp98より

本書の翻訳者である朴勝俊氏(以下敬称略)はビル・ミッチェル(現代貨幣理論の提唱者の一人)が来日したときに「私はすでに80%のMMTerです」と伝えたのだそうです。

しかしながら、100%のMMTerにはならなかったとのこと。

なぜならば、朴勝俊はベーシックインカムの支持者だったからです。

私も同様にベーシックインカム賛成論者であり、雇用保証プログラムに対して懐疑的なので、80%のMMTerのままです。

さらに、上記引用元のように、朴勝俊は雇用保証プログラムの問題点を浮き彫りにしていきます。

要するに、働くことは可能なのだが、個別事情があって働くことよりも重要なことに集中するべき人々を救えないのです。

しかも、現代貨幣理論の提唱者であるビル・ミッチェルはベーシックインカムを絶対に許容しないことで有名です。

※参考記事:【総評】図解入門ビジネス最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本を読む

したがって、本書は現代貨幣理論を支持しつつも、ベーシックインカムを支持しているという稀有な本となっております。

それだけでも購入する価値があると思います。

以上です。

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