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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2022年1月10日(令和4年1月10日)
ウクライナという地政学的要衝を巡りアメリカとロシアが激突
米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領が7日、緊迫するウクライナ情勢についてオンライン形式で協議した。
引用元:米ロ、ウクライナ巡り緊迫の理由は
米欧はロシアが隣国ウクライナとの国境付近に軍を集結し、2014年に続いて再び侵攻するとの警戒を強めている。
国際情勢に明るい人間であれば既にご存知のことだと思いますが、ロシアが地政学的に重要な地域であるウクライナへ侵攻するのではないかとの懸念が強まっており、アメリカと欧州諸国、つまりはNATO(北大西洋条約機構)側が神経を尖らせています。
本日の記事においては、ウクライナ情勢がなぜ緊迫化しているのかという理由の概略を掴んでいただくため、作成させていただきます。
ロシアにとってのウクライナは、アメリカにとってのキューバである
まず、ウクライナという国家は、ロシアにとっての裏庭的側面、つまりは自国の勢力圏に留めておきたい国家という側面がございます。
かつてはソビエト連邦ということで、連邦の一部であり、黒海に面しており海へのアクセス権を確保するために必要なクリミア半島を領有している国家でもございます。
ウクライナが敵国になる、もしくは仮想敵国と同盟するということになれば、海へのアクセス権を失い、ロシアという国家が弱体化するきっかけになるかもしれないのです。
仮に、クリミア半島が仮想敵国または同盟国の手に落ちれば、ロシアの艦隊が黒海を安全に航行するのが極端に難しくなります。
背後や側面から砲撃されるかもしれませんし、機雷を敷設されて作戦線を寸断されるかもしれません。
したがって、ロシアにとってウクライナは地政学的要衝であり、アメリカにとってのキューバであり、大日本帝国にとっての満州と言えます。
そのような地政学的要衝において、政変が発生したことがこの問題のきっかけなのでございます。
親ロシア政権を親欧州側勢力が追い出すという政変で事態は急変する
ウクライナの民主的な選挙によって選ばれた親ロシア政権を親欧州側勢力が非民主的な手段で追い出してしまうという政変が発生してしまい、ロシア側が神経を尖らせてしまいました。
このままでは、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟することで、クリミア半島などの重要拠点が仮想敵国側の勢力圏に組み込まれてしまうと焦ったロシア側は、クリミア半島を表面的にはロシア系住民の多数決という民主的な決定と装いつつ、自国の領土に編入しました。
要するに、地政学的要衝を取られるぐらいなら先手を打って取るという手段を採用したことになります。
国際法的な判断はさて置いて、国家安全保障的かつ地政学的には合理的な行動でした。
※ロシアの行動に賛同しているわけではありませんので、誤解無きように。
その後、クリミア半島を無理やり自国領土に編入したと欧米諸国に非難され、金融制裁や経済制裁を喰らうこととなり、ウクライナ東部においてロシア系住民を利用した騒乱状態を引き起こしました。
ウクライナ側としては、親欧州勢力が政権を樹立して国家を運営していたのですが、ロシア側のあまりの強硬姿勢によって態度を硬化させ、NATO加盟を目標に掲げ、ロシアとの対立を深めることになりました。
ロシアとNATO(この場合は主にアメリカ)は全面的な軍事衝突を避けるため、外交交渉で事態を沈静化しようとしています。
ロシア側はどのような要望をNATO(北大西洋条約機構)側に伝えているのでしょうか。
ロシア側の提案は地政学的には合理的と言える
東部紛争の和平に向けた15年のミンスク合意の順守とNATOの東方拡大の停止、ロシア国境近くに攻撃兵器を配備、供給しないことだ。
引用元:米ロ、ウクライナ巡り緊迫の理由は
まず、ミンスク合意とは何かと申しますと、詳細は以下の在日ウクライナ側の談話を参照していただきたいのですが、要するにウクライナの統治権の回復、緊張緩和、停戦などの合意のことです。
NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大の停止とは、要するにアメリカを盟主とした欧州軍事同盟を東欧地域に拡大するのは止めてほしいということです。
「東欧を制するものがハートランドを制し、ハートランドを制するものが世界島(ワールドアイランド)を制し、世界島を制するものが全世界に君臨するであろう」という地政学において有名な言葉を実行しているのではないかとロシア側は恐怖しているようです。
そしてロシア国境近くに攻撃兵器を配備、供給しないことというのはそのままの意味でございまして、いつ何時奇襲されるかもしれないという緊張がございますので、緊張緩和のために武器を懐に収めてほしいとの要望です。
一見するとロシア側の要望も理解できなくはないですし、地政学的には合理的と言えます。
しかしながら、アメリカや欧州としてはこういった提案をすんなり受け入れることができません。
仮に、ロシア側の要望を丸呑みしてロシア国境から兵器を引き上げたとしましょう。
その隙を狙ってロシアが電撃突撃してきたらどうするのでしょうか。
反撃できず、NATO加盟国およびNATO加盟予定国を守ることができず、NATOという枠組みそのものが瓦解するかもしれません。
また、NATOの東方拡大の停止に関しても、NATOに加盟したいという独立主権国家の要望をロシアという仮想敵国の要望によって拒否しなければならず、NATOは仮想敵国に従属しているのかという疑念が生じます。
それもNATOの瓦解に一役買ってしまうかもしれません。
まさに相互不信が入り乱れてしまう国際政治の複雑怪奇さが如実に出てしまっている事案と言えましょう。
東西冷戦はふたたびか
バイデン政権はすでにウクライナに対戦車ミサイル「ジャベリン」やパトロール艇の売却を決めた。
引用元:米ロ、ウクライナ巡り緊迫の理由は
米議会では高度なミサイル防衛システムの調達を支援すべきだとの声も出ている。
2月にはトランプ前政権が決めたドイツ駐留米軍の削減計画の凍結を発表した。
バイデン政権はウクライナに対して武器を供与しており、中国を牽制する際の台湾と同じようにウクライナを応援するつもりのようです。
NATOの勢力圏拡大とロシアへの牽制、東欧地域における勢力均衡という観点からすれば合理的と言えましょう。
どちらも引かないつもりのようです。
個人的には東西冷戦ふたたびといった様相を呈していると認識しています。
ロシア側の軍事的挑発行為は継続するでしょうが、全面的な侵攻という事態にはならないのではないかと。
ロシアのプーチン大統領としても年金改革で失った支持をアメリカとの対決姿勢を鮮明にすることで回復したいということなのではないでしょうか。
解決せず、長期間の低強度紛争が継続すると予想します。
対ロシア中立派が対ロシア強硬派に転向する可能性あり
北欧のフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に加盟する権利を強調している。
引用元:フィンランドがNATO加盟示唆、米ロ協議控え権利強調
ニーニスト大統領が年頭演説で言及した。
(中略)
対ロシアで中立政策を掲げてきたフィンランドの動向がスウェーデンなど他国に波及することも考えられる。
ロシアと国境を接していながら対ロシアで中立政策を掲げてきたフィンランドがロシアを仮想敵国とするNATOに加盟する権利を強調しているようです。
フィンランドの大統領と首相が同じ主旨の発言をしているので、フィンランドの政権としての公式な統一見解として認識してよろしいでしょう。
ロシアの地政学的には合理的と言える行動は、多国間外交という点では暗い影を落とし、対ロシア強硬派を増やすという結果になる可能性ありです。
スウェーデンのような、少なくとも対ロシア強硬派とは言えない国家にも波及してしまうということになると、さすがにロシアと言え、外交的にはマイナスと判断するでしょう。
この件、注視していきたいです。
以上です。