
大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2025年12月25日(令和7年12月25日)
日本の国益よりもアメリカのご機嫌の方が大事だとでも言うつもりか
米国務省の報道担当者は19日、日本政府高官が「核をもつべきだ」と発言したことについて「米国にとって日本は核不拡散と核軍備管理の推進で世界のリーダーであり重要なパートナーだ」と表明した。
一部の親米派は上記のような記事を引用し、アメリカは日本の核武装に反対していると主張します。
それは間違いではありませんが、だからといって核武装を諦めろというのは間違いです。
日本が中国や北朝鮮のような侵略的な核武装国家によって核攻撃するぞと脅されたときに、どうするのでしょうか。
アメリカからの報復があるぞと脅し返すとでもいうのでしょうか。
独立主権国家のあるべき姿ではありませんし、アメリカが日本のために核兵器で報復する保証などありません。
日本をアメリカの保護国のまま、従属的な国家のままにしたいアメリカとしては日本の核武装に反対します。
それを押し切ってでも核武装する大義があるのか、軍事的合理性があるのかを議論するべきと私は主張したいのです。
議論するために必要なオフェンシブ・リアリズムという考え方
上記の動画でもご紹介しておりますが、シカゴ大学の国際政治学で有名なジョン・J・ミアシャイマー教授という方がいらっしゃいます。
核武装を議論する上で、必須の知見と慧眼をお持ちの方です。
個人的には、上記の動画を理解できる方というのは一握りなのではないかと考えます。
なぜならば、ミアシャイマー教授の基本的な考え方であるオフェンシブ・リアリズムという国際政治の観点がわからないからです。
本日は、生成AIの力を借りながら、オフェンシブ・リアリズムをご紹介したいと思います。
オフェンシブ・リアリズムとは
ジョン・J・ミアシャイマー(John J. Mearsheimer)(以下敬称略)は、リアリズム学派の主要な理論家の一人です。
特に「オフェンシブ・リアリズム」(Offensive Realism)と呼ばれる理論を提唱しています。
この理論は、国際政治の現実を冷徹に分析し、国家間の競争が避けられないものであることを強調します。
ミアシャイマーは、1947年に生まれ、米陸軍士官学校(ウェストポイント)を卒業後、軍務を経てコーネル大学で博士号を取得しました。
彼の代表作である『大国政治の悲劇』(The Tragedy of Great Power Politics, 2001年)は、オフェンシブ・リアリズムの基盤を築いた書物です。
この理論は、冷戦後の国際秩序を予測し、今日の米中対立やロシアの行動を理解する上で影響力を持っています。
オフェンシブ・リアリズムは、構造的リアリズム(Structural Realism)の亜種です。
ケネス・ウォルツの「ディフェンシブ・リアリズム」(Defensive Realism)と対比されます。
ウォルツの理論が国家の生存を確保するための防衛的な行動を重視しています。
一方で、ミアシャイマーの理論は、国家が積極的にパワーを最大化し、攻撃的な行動を取ることを主張します。
なぜなら、国際システムが無政府状態(anarchy)であるため、国家は他国の意図を信頼できず、常に脅威に備えなければならないからです。
この理論の核心は、「大国は常に覇権を目指す」という点にあります。
国際政治の五大前提条件について(オフェンシブ・リアリズムの場合)
オフェンシブ・リアリズムの基本的前提オフェンシブ・リアリズムの基盤は、5つの主要な前提にあります。
これらは、国際政治の構造を定義づけ、国家の行動を決定づけます。
国際システムの無政府状態(Anarchy):国際社会には、中央政府のような上位の権威が存在しません。
各国家は自己防衛に頼らざるを得ず、他国が脅威となる可能性を常に考慮します。
この無政府状態は、国家間の信頼を不可能にし、協力よりも競争を促進します。
ミアシャイマーは、これを「自助システム」(self-help system)と呼びます。
国家の攻撃能力(Offensive Military Capability):すべての国家は、他国を攻撃する潜在的な軍事力を持っています。
たとえ現在平和的であっても、将来の意図は予測不能です。
したがって、国家は他国の軍事力増強を脅威とみなします。
例えば、核兵器やミサイル技術の拡散は、この前提を体現しています。
他国の意図の不確実性(Uncertainty about Intentions):国家は、他国の真の意図を知ることができません。
友好国が突然敵対的になる可能性があるため、信頼は築けません。
ミアシャイマーは、これを「信頼の欠如」(absence of trust)と表現し、国家が最悪のシナリオを想定せざるを得ない理由とします。
生存の追求(Survival as the Primary Goal):国家の最優先目標は生存です。
領土の喪失や主権の侵害を避けるため、国家はパワーを蓄積します。
しかし、オフェンシブ・リアリズムでは、生存のためには単なる防衛ではなく、積極的なパワー拡大が必要だと主張します。
国家の合理性(Rational Actors):国家は合理的に行動します。
費用と利益を計算し、生存を最大化するための戦略を選択します。
この前提により、国家の行動は予測可能であり、道徳やイデオロギーではなく、構造的な要因によって駆動されます。
これらの前提から、ミアシャイマーは「大国は可能な限りパワーを最大化し、地域覇権を目指す」と結論づけます。
なぜなら、覇権国家だけが真の安全を確保できるからです。
グローバル覇権は達成不可能ですが(海洋や地理的制約のため)、地域覇権(例:米国のような大陸覇権)は追求されます。
この点が、ディフェンシブ・リアリズムとの最大の違いです。
ウォルツは「適度なパワーで十分」とし、過度の拡大が逆効果になると考えるのに対し、ミアシャイマーは「パワーの最大化が生存の鍵」とします。
理論の核心:大国政治の悲劇
ミアシャイマーの理論のタイトルにもある「大国政治の悲劇」とは、国家が生存を追求する結果として、永遠の競争と戦争のリスクが生じることを指します。
これは、ギリシャ悲劇のように、避けられない運命です。
国家は他国を脅威とみなしてパワーを拡大しますが、それが他国を刺激し、軍拡競争を引き起こします。
結果として、誰もが安全を求めながら、全体として不安定になるのです。
具体的に、国家の戦略は以下のようになります。
バックパッシング(Buck-Passing):大国は、脅威を他国に押し付けることを好みます。
例えば、ヨーロッパのバランス・オブ・パワーでは、英国が大陸国家の競争を傍観し、弱体化した側を支援する戦略です。
バランシング(Balancing):脅威が増大すると、同盟を結んで均衡を保ちます。
冷戦時のNATOは、ソ連に対するバランシングの例です。
バンドワゴニング(Bandwagoning):弱小国は、強大国に追従しますが、大国はこれを避け、独立を保ちます。
ミアシャイマーは、陸上パワーと海上パワーの違いを強調します。
陸上大国(例:ロシアや中国)は、隣接国を征服しやすいため攻撃的ですが、海上大国(例:米国や英国)は、海洋の障壁により防衛的です。
しかし、米国のようなグローバルプレーヤーは、遠隔地の脅威を封じ込めるために積極的に介入します。
ディフェンシブ・リアリズムとの比較
オフェンシブ・リアリズムを理解するためには、ディフェンシブ・リアリズムとの違いを明確にしましょう。
ケネス・ウォルツのディフェンシブ・リアリズムは、無政府状態を認めつつ、国家が「セキュリティ・ジレンマ」(security dilemma)を避けるために最小限のパワーを追求すると主張します。
セキュリティ・ジレンマとは、一国の防衛強化が他国を脅威と感じさせる悪循環です。
ウォルツは、核抑止のように防衛技術が優位な場合、安定が保てると考えます。
一方、ミアシャイマーは、攻撃技術が優位な国際システムでは、防衛だけでは不十分だと反論します。
国家は機会があれば拡大し、覇権を狙います。
例えば、ナポレオン戦争や第二次世界大戦は、オフェンシブな行動の結果です。
ミアシャイマーは、ウォルツの理論を「ステータス・クォ・バイアス」(現状維持の偏り)と批判し、現実の歴史が攻撃的な拡大を示していると指摘します。
理論の適用:歴史的・現代的事例
オフェンシブ・リアリズムは、歴史的事件に適用可能です。
19世紀のヨーロッパでは、プロイセン(後のドイツ)がパワーを最大化し、統一戦争を起こしました。
20世紀の日本は、アジア覇権を目指して大東亜戦争を引き起こしましたが、失敗しました。
ミアシャイマーは、これを「覇権追求の悲劇」と分析します。
冷戦後、ミアシャイマーは米国の一極覇権を予測しつつ、中国の台頭を警告しました。
彼の2001年の著作では、中国が経済成長により軍事力を強化し、アジア覇権を目指すと予言しました。
今日の南シナ海問題や台湾問題は、この理論の適用例です。
米国は、中国の拡大を封じ込めるためにAUKUS同盟を形成し、バランシングを行っています。
また、ロシアのウクライナ侵攻(2022年)は、NATO拡大に対するロシアの安全保障上の懸念から生じたオフェンシブ行動として説明されます。
ミアシャイマーは、NATO東方拡大を批判し、それがロシアを刺激したと主張します。
さらに、ミアシャイマーはリベラリズムを批判します。
リベラリズムは、民主主義や経済相互依存が平和をもたらすと信じますが、ミアシャイマーはこれを幻想とし、パワーの論理が優位だとします。
例えば、EUの統合は一時的で、地政学的緊張(例:ギリシャ危機)が再燃すると予測します。
イギリスのEU離脱もあり、イギリス以外でも離脱の動きが燻っている国家も存在しています。
さらに、経済的相互依存で言えば、ウクライナとロシアの相互依存はかなり高かったと言えます。
けれども、ロシアが一方的にウクライナへ電撃戦を仕掛けてしまいました。
経済的相互依存関係よりも安全保障上の脅威や緩衝地帯が欲しい内陸国の論理が優位だったことが証明されました。
批判と理論の限界
オフェンシブ・リアリズムは、多くの批判を受けています。
まず、過度に決定論的だという点です。
国家の行動を構造だけで説明し、国内政治やリーダーの役割を無視します。
例えば、ヒトラーやスターリンのような個人が戦争を引き起こしたケースでは、構造だけでは不十分です。
また、協力の事例(例:国際機関の役割)を過小評価します。国連やWTOのような制度が紛争を緩和する可能性を否定します。
第二に、予測の誤りです。
ミアシャイマーは冷戦後の平和を予測せず、恒常的な競争を強調しましたが、欧州の平和は持続しています。
これに対し、彼は「平和は一時的」と反論します。
第三に、倫理的批判:理論が戦争を正当化し、道徳を無視するとされます。
ミアシャイマーは、これを「現実の記述」として擁護しますが、平和主義者からは攻撃されてしまいます。
しかし、ミアシャイマーのオフェンシブ・リアリズムの影響力は大きいです。
米国の外交政策(例:ブッシュ政権のイラク戦争)や、中国の「一帯一路」戦略を分析する枠組みを提供します。
結論:オフェンシブ・リアリズムの意義
オフェンシブ・リアリズムは、国際政治を冷徹に分析するツールです。
国家が善意ではなく、パワーの論理で動くことを示し、平和の幻想を戒めます。
今日の多極化世界(米中露の競争)で、この理論はますます関連性が高まっています。
ミアシャイマーの言葉を借りれば、「大国は生存のために攻撃的にならざるを得ない」――これが悲劇の本質です。
将来的には、気候変動やサイバー脅威のような新課題が理論を進化させるでしょうが、基本的前提は不変です。
以上です。