大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2022年8月13日(令和4年8月13日)
仕事が多忙過ぎて、精神的に厳しいです。
それはさておき、久々にアメリカ経済に関する記事になります。
インフレ抑制法案が下院にて可決される
米議会下院は12日、再生可能エネルギーの推進などを盛り込んだ新たな歳出・歳入法案を可決した。
引用元:歳出・歳入法案が成立へ 米下院で可決、再エネ支援など
(中略)
法案全体でみれば財政支出を大きく上回る歳入増が見込まれ、財政健全化への効果が大きい。
米議会は法案修正後の予算規模を明らかにしていないが、ペンシルベニア大の試算によると10年間で政府債務が2640億ドル削減される。
2022年11月に中間選挙を控えるアメリカ民主党が主導して、歳出・歳入法案を下院にて可決しました。
すでに上院では可決しておりますので、バイデン大統領が署名すれば成立することになります。
この法案は通称「インフレ抑制法案」と呼ばれており、法案全体だと財政支出を大きく上回る歳入増が見込まれ、緊縮財政に舵を切った可能性がございます。
変動相場制を採用し、自国通貨発行権を保有する中央政府に財政的予算制約は存在しません。
MMT(現代貨幣理論)の提唱者であるステファニー・ケルトン教授はどのようにこの法案を評価されているのか気になるところでございます。
さて、それはさておき。
この法案の細かいところを分析しつつ、今後のアメリカ経済の行く末を予想していきましょう。
気候変動対策と医療費低減策が盛り込まれる
歳出は再生可能エネルギーへの設備投資や低中所得者がエコカーを購入する際の税額控除など気候変動対策が中心だ。
引用元:歳出・歳入法案が成立へ 米下院で可決、再エネ支援など
期限を迎えるはずだった医療保険の補助を2025年まで3年延長することも盛り込んだ。
(中略)
高齢者向け公的医療保険「メディケア」の運営者が製薬会社と価格交渉を行うよう改革する。
製薬会社の立場が相対的に弱くなり、薬価を引き下げる効果を見込む。
このインフレ抑制法案の歳出面を分析すると、再生可能エネルギーへの設備投資やエコカー減税のような気候変動対策が主役のようです。
また、医療保険の補助を3年間延長することになり、医療費が高くアメリカ国民にとっての悩みの種が大きくなることを防ぐことになりました。
アメリカの医療費の高さは本当に問題でして、病気やケガになった場合のアメリカ社会は地獄です。
高齢者向けの公的医療保険「メディケア」の運営者が製薬会社と価格交渉を行うようになり、薬価を引き下げる効果を見込むとのことです。
率直に申し上げて、薬価引き下げが実現するか否かに関して懐疑的に見ています。
薬価を引き下げないと業務停止、もしくは大幅増税ということにしないと、アメリカの強欲経営者は考えを改めないでしょう。
インフレ抑制法案としての機能が果たせるのかどうか多面的な政策評価をしないと判断は難しいです。
GAFAへ増税し、株主資本主義是正へ
実効税率を低く抑えている巨大IT(情報技術)企業などに対する法人税に15%の最低税率を課すことで2000億ドル規模の歳入増を見込む。
引用元:歳出・歳入法案が成立へ 米下院で可決、再エネ支援など
日本の国税庁にあたる米内国歳入庁(IRS)も機能を強化する。
企業の自社株買いにも1%課税する。
アメリカの巨大IT企業がイノベーションを巻き起こしております。
日本国内でもGAFA(Google,Apple,旧Facebook,Amazon)を育成するべきとの論調もございます。
ただ、アメリカ国内においてはそんな巨大IT企業に対してもっと納税しろと反感が強まっております。
成長している若手のIT企業を買収して市場を独占しようとする姿勢や納税額が少ないことに対する批判が渦巻いておりました。
そのような反感や批判の声を受けて、アメリカの民主党政権は巨大IT企業に対して15%の最低税率を課すことで、増税に踏み切りました。
さらに企業の自社株買いにも1%課税するということになりました。
本当に企業の自社株買いを抑制できるかは疑問ですね。
設備投資減税と賃上げ減税を盛り込むべきだった
個人的に言いたいのは、自社株買いへの課税だけでなく設備投資減税や賃上げ減税も盛り込むべきだったのではないかと。
巨大IT企業は株価が下落した場合に、株主還元と称して自社株買いを行い、株価を底上げしておりました。
それが課税されるとなると、自社株買いを抑制することにはなりますが、その分の現預金が労働者に分配されるとは限りません。
さらにインフレ抑制法案なのですから、効率的な生産活動を実現するための設備投資を後押しするべきでした。
気候変動対策に絞るのではなく、全般的な設備投資減税が必要だと考えます。
増税のメリットは節税意欲の増進です。
経営者の節税意欲を上手いこと制御してより良い社会を実現するように制度設計してほしいです。
連邦政府の黒字はアメリカ経済の赤字になる
誰かの支出は誰かの所得でございます。
連邦政府という主体、経済における脇役がお金を使うことになると、それを受け取る民間企業の売り上げが伸びます。
それがあったので、2020年と2021年はアメリカ経済が潤い、その恩恵の一部がアメリカの株式市場に流入し、株価が爆上げしました。
その構図がほぼ確実に崩れようとしております。
ただ、薬価が引き下げられ、インフレが抑制され、巨大IT企業へ納税を促すのであれば大きなメリットがあるのも事実。
アメリカ国民にとってはメリットも大きいインフレ抑制法案ですが、私のようなアメリカ株式市場を主戦場とした個人投資家にはメリットが小さいです。
アメリカ連邦政府の月次財政収支を確認すると、財政黒字とはいきませんが財政赤字幅は減少しております。
現代貨幣理論を支持する私としては、アメリカ経済に暗雲が広がり始めたと評価せざるを得ません。
さらに、別記事でもございます通り、逆イールドという短期国債の金利と長期国債の金利の逆転現象が発生しております。
おそらく2023年または2024年の景気後退入りは確実かと思います。
2022年1月-3月期と2022年4月-6月期は共に実質GDPはマイナスでしたので、一般的にはテクニカル・リセッションとなっております。
もしかしたら、2022年は通年で実質GDPがマイナスになるということもあり得るかもしれません。
以上です。