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内部留保課税は下策も下策だ!設備投資を増やすことが目的のはずだ!

更新日:

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年6月2日(令和元年6月2日)

内部留保課税の目的は何か

以前の記事で「内部留保という言葉を使うべきではない。なぜならば、会計上そのような勘定項目は存在しないから」と申し上げました。

以前の記事の内容と重複しますが、以下において簡単に説明します。

貸借対照表の資産の部において「利益剰余金」という勘定項目において記載されているものを一般的には内部留保と定義しています。

財務状況を示す貸借対照表で計上されているという意味で、ストックの内部留保と言えます。

利益剰余金」とは民間企業の収益から、その収益を得るために必要だった経費を差し引き、税金などを納め、配当金や役員賞与などの支払いを済ませた残りである「当期純利益」の累積額であると定義できます。

利益剰余金(ストックの内部留保、もしくは狭義の内部留保とされている)は過去において、どれくらい「当期純利益」を積み上げてこれたのかを示す勘定項目です。

企業の内部にどれくらいのお金が貯め込まれているのかを示しているわけではありません。

貸借対照表の「利益剰余金」を指して、”企業の内部留保は過去最大の446兆円。大企業や銀行にだけお金が貯まっていき、社会全体に還元されない”という論調がございます。

しかしながら、その「利益剰余金」は全額、現金もしくは預金という形で民間企業が保有しているわけではありません。

財務省の法人企業統計からグラフを作成しました。
ご覧ください。

つまり、企業の貸借対照表に446兆円という「利益剰余金」はございますが、それらが全部「現金・預金」という形で存在しているわけではないのです。

したがって、内部留保に課税するということは現実的にはできません。
お金がないところに課税することができるのでしょうか。

そもそも、内部留保課税は「企業がお金を貯め込み、賃上げや設備投資をしないから問題である。社会や家計に還元されていない」という問題意識が出発点なのです。

それ自体は正しい問題意識なのですが、政策目的は正しくても、政策手段は間違っていると言わざるを得ません。

仮に、内部留保を「利益剰余金」と定義し、それに課税するとなれば、株主への配当を増やし「利益剰余金」をほぼゼロにすることで課税回避することが可能となってしまいます。

社会や家計への還元を目的とした内部留保課税が結果として株主への還元を促す結果になる可能性が高いのです。

設備投資減税が必要である

内部留保課税が非現実的な政策手段なのであれば、どのような政策手段を講じればよいのでしょうか。

まず、第一に、設備投資減税が妥当だと考えます。
設備投資減税とは、大雑把に言えば、設備投資を増やした企業を対象とする減税措置です。

したがって、必ず民間の設備投資という需要が生じる減税なので「減税したけど民間企業がお金を使ってくれなかった(現金・預金として積み上がった、株主への配当に回った、借金返済に回った)」ということがありません。

では具体的に設備投資減税にはどのような方法があるのでしょうか。

投資減税には、投資金額のうち一定額を税額から控除する「投資税額控除」。そして、設備導入の初年度に一定率の特別償却を認め、あるいは毎年の償却率を高めることにより、減価償却のスピードを速める「加速度償却」の2種類の方法がある。

http://www.isfj.net/ronbun_backup/2012/o01.pdf

投資税額控除と加速度償却という方法があるようです。
投資税額控除についてはイメージできると思いますが、加速度償却については理解が難しいです。

簡潔に説明します。

例えば、10年で減価償却できる設備投資を行ったとします。

加速度償却というのは、本来10年で減価償却していくのを5年で減価償却できるようにする償却期間の短縮や、特別償却として、通常の減価償却に加えて、追加の償却を行うことを指します。

参考URL:http://www.kk-support.com/setsuzei/gs_toku.htm

設備投資をした場合、その費用を費用として損益計算書に全額計上することができません。

設備投資金額のある一定割合だけ、費用として計上することになります。

それが通常10年だったら、5年に短縮することにより、短期間で費用として計上することになり、実質的に法人税を低く抑えることができるのです。
実質的な節税になると言い換えてもよいかと。

ただ、ここで難しいのは、どのような税制にするかで、設備投資減税の性質が変わってしまいますし、設備投資減税の対象条件を厳格化してしまうと、使いにくい制度になってしまうのです。

結局、どのような設備投資減税を実施するべきなのでしょうか。

主な目的として、中小企業の効率的な生産活動を包括的に応援するための暫定的税制改革となります。

中小企業の定義は中小企業庁で示されているものを使ってお話を進めていきたいと思います。
参照URL:http://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq01_teigi.htm

◆◆◆包括的中小企業設備投資促進税制◆◆◆

対象:日本国内の中小企業

複数年度予算額=1兆円

税額控除額=(取得金額 - 適用事業年度の減価償却費)× 10%

特別償却限度額=取得金額から普通償却限度額を控除した金額

適用期間:3年

内容:本制度の対象企業は有形資産または無形資産の取得金額に応じて、 税額控除もしくは特別償却を行うことが可能。

以下、対象条件

1、国内設備投資を実施する場合でかつ、国内企業から新規調達する場合において本制度の対象とする。

設備投資減税の恩恵を国内企業に限定することで、海外の企業に恩恵を与えることを抑制することが目的。

2、国内設備投資の年間総投資額が適用事業年度の減価償却費を超えている場合に本制度の対象とする。

2に関しては、生産設備等の原状回復だけでは減税対象としないということです。

例えば、おにぎり生産企業がおにぎり製造のための生産設備を持っているとします。

しかし、生産設備ですから、生産すればするほど老朽化します。
5000個を生産できるのに、老朽化で4000個しか生産できないという状況になります。

おにぎり生産企業は量産機械企業に対して、生産設備の修理や入れ替えを依頼するのですが、それは生産能力の維持であって、増強ではないのです。
これでは設備投資を促進する目的には合致しません。

3、国内設備投資の年間総投資額が前事業年度と比較して20%以上増加している場合に本制度の対象とする。

3に関しては、明確に減税措置を受けるという目的をもった国内企業が新規設備投資を増やした場合にのみ減税対象とするため、このような条件を設けました。

たまたま、企業の設備投資計画上、設備投資を増やしたという場合には減税の恩恵が得られないような設計です。

特記事項

※全ての国内設備投資を減税対象とする。生産設備のみなどと限定しない
※この制度による特別償却と税額控除との重複適用は認めない

※税額控除限度額は設けない

※税額控除額がその事業年度の法人税額を超えるために、その事業年度において税額控除額の全部を控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった金額について、1年間の繰越しが認められるものとする

以上です。

本日は設備投資減税にのみ記述しましたが、設備投資補助金や法人税の累進課税化に関しても申し上げたいことがあります。
それは後日。

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