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反逆する武士

現代貨幣理論

イタリアが借用書で政府支出するかも。ユーロの呪縛から解き放つべき

更新日:

じぇーむすさんによる写真ACからの写真

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年6月15日(令和元年6月15日)

本日は、現代貨幣理論における貨幣負債論を理解する上で分かりやすい事態が発生するかもしれないというそんなお話です。

共通通貨「ユーロ」が流通するイタリアのお話ですが、現在のイタリアの現状と貨幣のお話を交えつつ、ご紹介できればと思います。

イタリア政府がイタリア国債で支払うかもしれない

結論だけを先に申し上げると、イタリアが政府支出する場合、物やサービスを提供する企業に対して、ユーロで支払うのが今までのやり方だったのですが、イタリア国債の縮小版で支払うことになるかもしれません。

イタリアのポピュリスト(大衆迎合主義)政権の指導者は、公共部門の納入企業などへの支払いをユーロではなく、「借用書(IOU)」で行うことを検討している。IOUでの支払いは、イタリアがユーロ圏を離脱する事態に陥った場合の「新通貨導入の出発点」になり得るとして、同国の欧州連合(EU)懐疑派が唱えていた手段だ。

連立政権を形成する「同盟」と「五つ星運動」の党首は、政府の滞納金について「ミニBOT」と名付けたIOUで支払う案を協議する方針だ。BOTはイタリア国債を意味する。

https://jp.wsj.com/articles/SB11082206419117534460204585358021560022144

※上記はWSJの記事から重要な部分だけを一部引用させていただきました。

イタリアが政府支出した際、物やサービスを企業から調達することになります。橋、道路、学校など建設する際に、建設資材を調達することになりますし、建設する作業員が提供する作業自体もサービスとして調達することになります。

本来ならば、それらの債務を帳消しにするため、お金が支払われることになります。

イタリアの使用通貨はユーロですので、本来ならば、ユーロで建設資材や建設サービスに対して、ユーロで支払うことになります。

それが将来的にはイタリアの「ミニBOT(借用書)」で支払うことになるかもしれません。

もし実現した場合、現代貨幣理論における貨幣負債論を裏付けるような出来事として人類史に刻まれることになります。

イタリア国債が貨幣として流通するのか

さて、イタリア国債の縮小版と言える「ミニBOT(借用書)」ですが、ここで考えなければならぬことがあります。

貨幣として成立するのかという点であり、イタリア国内において流通するのかという点です。

言い換えるのであれば、限定的にでも「ミニBOT(借用書)」が貨幣としての機能を果たせるのかという問題がございます。

拙ブログにて、貨幣の3つの機能について以前の記事で取り上げ、説明させていただきました。

1、価値保存機能
2、価値尺度機能
3、交換媒介機能

この3つの機能が正常に機能するのかという点が問題でございます。
価値保存機能については、「ミニBOT(借用書)」が発行され、企業に手渡された瞬間に、価値が暴落してしまうのかどうかです。

さすがに価値が暴落したら、価値保存機能が失われてしまうことになります。
仮に、法人税や付加価値税の支払いに「ミニBOT(借用書)」を使用してもいいとなれば、ある程度は需要が生まれるのではないかと考えています。

通常、ユーロ圏においては、政府の徴税権の行使の際に、納める物は何かと申しますと「ユーロ」なのです。

それを、イタリア国内からの徴税に限り、「ユーロ」ではなく「ミニBOT(借用書)」でもよいとなれば、企業側として、政府に「ユーロ」ではなく「ミニBOT(借用書)」を納めればいいとなり、価値が暴落するのは防げるのではないかと推察します。

価値尺度機能に関しては気掛かりなことがございます。
「ミニBOT(借用書)」の額面に記載されている通貨単位が何かということです。

もし「ユーロ」という通貨単位である場合、価値尺度機能を果たせることになりますし、経済において混乱はないでしょう。

仮にイタリアの独自通貨単位である「リラ」が通貨単位となるととんでもないことになります。

ある意味「政府機関のユーロ離脱」のようなものだからです。
そうすると、ECB(欧州中央銀行:ユーロの発行銀行)による影響を受けにくくなります。

その代わり、価値尺度機能が不十分になる可能性がございます。
「ユーロ」と「リラ」の交換レートが発生し、「リラ」の価値が変動してしまうからです。

※交換レートが発生しても、極端にレートが変動しなければ問題ないと思います。

交換媒介機能に関しては貨幣負債論商品貨幣論の激突になります。

商品貨幣論的には、それ自体に何の価値もない借用書では、人々が「ミニBOT(借用書)」を受け取らず、イタリア国内において流通することはないので、この試みは失敗に終わると結論付けます。

貨幣負債論的には、貨幣とは負債であるから、現代の貨幣と何ら変わらないため、イタリア人は問題なく受け入れることになります。

イタリアの独自通貨「リラ」はイタリアの中央銀行の債務だが、それがイタリア政府の債務に成り代わっただけであり、物やサービスを購入する際の交換媒介機能を問題なく果たすことになるという結論になります。

個人的な意見を申し上げれば、イタリアが政府支出の支払いに「ミニBOT(借用書)」を使用するためには、以下の条件を満たさなければなりません。

逆に言えば、以下の条件を満たすのであれば、政府支出の支払いのため「ミニBOT(借用書)」を発行するという試みは成功すると思います。

1、「ミニBOT(借用書)」を用いて、中央政府及び地方政府の税金を納めることができる。

2、国内での流通を促進するため「ミニBOT(借用書)」も通貨であると法律で定める

3、紙幣での発行とし、偽造防止機能を付与する。
4、イタリア国内の金融機関に持っていけば、預金として受け取ってもらえる

イタリアはなぜ「ユーロ」で支払わないのか

イタリアは「自国通貨」を持っていません。

イタリアは「ユーロ」という「共通通貨」を使用する国家であり、自国政府の都合で「ユーロ」を刷ったり、「ユーロ」建てのイタリア国債を買い取ったりということができません。

そのせいで、十分な財政出動ができないため、イタリア政府はユーロでの支払いを滞納する事態に陥りました。

だったら、欧州中央銀行のユーロじゃなくて、自国政府の都合で自由に発行できるお金を新規に創ってしまえばいいということになりました。

イタリアの連立政権「同盟」「五つ星運動」はいわゆるポピュリズム政党であり、反緊縮派のようです。

「ミニBOT(借用書)」の件は、両党の連立合意に盛り込まれていたということなので、現代貨幣理論に精通した誰かが両党のどちらかもしくは両方にいたのではないかと推察しています。

そもそものお話ですが、以下のような事情をイタリアは抱えていました。
※日経新聞電子版の記事から一部引用します。

欧州連合(EU)の欧州委員会は5日、イタリアの財政状況がEUの基準を逸脱しているとして、EU財政ルールに基づく制裁手続き入りが「正当化される」との報告書を公表した。EU各国が協議した上で夏前にも制裁に踏み切る可能性がある。伊ポピュリズム(大衆迎合主義)政権の反発は確実で、対立が深まるのは避けられない。
EUは、ルール違反が深刻な加盟国には「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」と呼ぶ制裁措置を発動し、財政をEUの監視下に置ける。

(中略)
EUは単一通貨ユーロの信認を守るため、加盟国の財政を巡ってGDP比で(1)財政赤字は3%を超えない(2)公的債務は60%を超えないという共通ルールを設けている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45727360V00C19A6FF2000/

可能な限り大雑把に言えば、ユーロという通貨の信認を保つため、ユーロ加盟国は財政赤字を抑制しなければならないというルールがございます。

イタリアはそのルールに違反しているため、EUが制裁する(具体的には、35億ユーロの支払い)というお話でございます。

財政赤字を抑制するということは、民間黒字を抑制するということでございます。

政府がお金を出して、何らかのサービスを提供してもらうから、民間企業は売り上げを確保することができ、雇用を維持し、賃金を支払うことができるわけですよ。

政府がお金を出すのを渋ると、民間企業の売り上げは低くなり、雇用の維持が難しくなり、賃金支払いも抑制されてしまいます。

イタリアの連立政権が激怒するのも当然です。

イタリアはユーロの呪縛から逃れた方がいい

結論を言ってしまうと、ユーロの信認なんてどうでもいいので、ユーロから離脱するのが良いと思いますし、EUから離脱するのも良いと思います。

そして、大規模財政出動して、地中海において経済大国として君臨するべきでしょう。

もちろん、そんな簡単なお話ではございませんので、イタリア国債の縮小版を支払いのために発行するということから始めているということなのだと思います。

イタリアの前途ある経済成長を切に願います。

以上です。

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