大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2020年9月6日(令和2年9月6日)
ジョブ・ギャランティとベーシックインカム
Twitter上で、上記のような画像が流布され、ジョブ・ギャランティ(JG)とベーシックインカム(BI)に関する対比がなされているようです。
※ジョブ・ギャランティは就業保証プログラムのことと理解して問題ありません。
現代貨幣理論の提唱者はベーシックインカムに批判的であり、その考えが如実に反映されております。
ちなみに、上記の画像は『図解入門ビジネス最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本』のp123に掲載されております。
※枠線の色は違いますが。
※参考記事:【総評】図解入門ビジネス最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本を読む
結論から申し上げて、ジョブ・ギャランティとベーシックインカムの対比はあまりにも悪意に満ちており、アンフェアと言えます。
就業保証プログラムとは
ジョブ・ギャランティを日本語に訳するのであれば、就業保証プログラムが適当かと存じます。
できるだけわかりやすく、就業保証プログラムと呼称します。
以下、就業保証プログラムをわかりやすく説明します。
日本政府もしくは地方自治体が働きたい人は誰でも雇う旨を宣言し、誰でも雇う際の賃金も公表し、最後の雇い手としての役割を果たすことになります。
雇い入れる際に、日本政府もしくは地方自治体が提示する賃金が実質的に最低賃金として機能します。
最低賃金を全国一律にして、さらに政治の力で引き上げることが可能になります。
不況期もしくは恐慌期において、失業者が増えた場合に雇用を維持することができ、好況期もしくは景気過熱期においては、政府及び地方自治体から民間企業へ労働力が移動します。
ある意味でのセーフティネット(安全網)として機能します。
これにはメリットがあり、失業による所得減少を最小限に抑制することができます。
失業手当や社会保障給付を最小限にすることができます。
失業に伴う、社会的費用を削減することができます。
失業に伴う社会的費用とは、人的資本の劣化(長期失業が招く労働力の腐食)、家族の崩壊、犯罪の増加、自殺の増加、医療費の増加などが含まれます。
就業保証プログラムは強制ではなく、任意であり、労働する能力と意志のある者が就業保証プログラムの対象になります。
また、公的機関に雇用された労働者は解雇される可能性があり、すべての雇用問題を解決するような代物ではございません。
なぜこのような政策がMMT(現代貨幣理論)において論じられているかと申しますと、ヨーロッパやオーストラリアなどで高い失業率が継続していたからだそうです。
※引用元文献:内藤敦之『内生的貨幣供給理論の再構築』より
失業という問題が恒常的に発生する経済を分析するに当たり、就業を保障するような計画案が立案されたのではないかと推察します。
仕事内容に関しては、現時点で地方自治体や日本政府が担っている業務を失業者にも行ってもらうというワークシェアリングではなく、就業保証プログラムのために計画された非営利事業を行います。
ただ、制度設計上の問題、有効に機能するのか、多様な仕事を必要な量だけ確保できるのかなどの批判もあります。
以上が簡単な就業保証プログラムの説明になります。
ベーシックインカムへの言われなき批判
さて、本題に戻りたいと思います。
上記画像のジョブ・ギャランティとベーシックインカムの対比ですが、どういった立場でこの対比を語るのかを明確にしておきます。
私はユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)に立脚し、すべての国民に一定金額のお金を支給する政策を主張しています。
また、UBIを実行する場合に増税や社会保障の全廃はしません。
増税せず(むしろ消費税廃止が望ましい)社会保障は維持(むしろ拡充が望ましい)した上で、お金を個人宛に配ります。
今回の記事は上記のようなUBIに賛成する立場の人間が書いた文章ということを念頭においていただきたいと思います。
失業と完全雇用
まず、UBIは失業を無くし、完全雇用を第一目的として掲げている政策ではありません。
さらに言えば、UBIを主張している人間は、中央政府は失業や完全雇用保証に関して責任を持ちたくないからお金を配れと主張しているわけではありません。
そんなふざけたことを主張しているUBI論者を見たことがありません。
完全雇用に関しては、公務員を増員して、公共投資を大規模に行いつつ減税することで、当然のことながら目指すべきです。
経済調節機能
UBIは経済調節機能が無いという批判はちょっと理解できません。
UBIの制度設計で経済調節機能は付与できるからです。
例えば、UBIを導入するときにインフレ率が2%以下ならば、国民一人当たり月額1万円上乗せ、インフレ率が4%以上ならば、国民一人当たり月額1万円減らすというルールを決めれば、調節機能は付与できます。
また、UBIを導入する際に、支給金額を所得税の課税対象とするならば、好景気になって所得が増えたら税金として徴収されるお金が増えますので、景気の過熱を抑制できますし、所得が減れば事実上の減税になり景気を下支えします。
失業バッファーストックOR雇用バッファ―ストック
そもそも失業を無くすとか完全雇用を第一義的に目指すような政策ではないので、UBIを失業バッファーストックOR雇用バッファーストックという概念で評価すること自体問題なので、言及しにくいですね。
確かに景気が過熱し過ぎてインフレになり、それを抑制するために失業を増やすというのは非倫理的であるという主張は理解できます。
UBIは働くことや失業による経済的損失をできるだけ最小化することを目的としています。
ブラック企業で働かざるを得ない人間はUBIがあれば、転職しやすいですし、病気になって働けなくなってもすぐに経済的に困窮するという最悪の事態は防ぐことができます。
働くことにもデメリットがあるし、失業にもデメリットがあるのだから、どちらのデメリットも最小化できるような政策が必要という考えに立脚していると言えましょう。
雇用の副次的利点
雇用の副次的利点は認めますが、雇用の副次的欠点もあります。
生産性を高め続けなければならないため、人間関係の軋轢が生まれる場合もございます。
子どもを抱え、病気を抱え、障害者だったり、発達障害を抱えていたり、家庭の事情で地域限定じゃないと働けない場合はどうすればいいのでしょうか。
セーフティネットを雇用で補うというのは中々酷な発想だと思います。
むしろ既存の社会保障は維持しつつ、UBIで穴を塞ぐ方がより多くの人を救うことができます。
仕事の再定義
営利のみを至上とする狭量な仕事の現行概念を追認する???
こんなふざけた意識を持ったUBI論者はいるのか???
むしろ、営利のみを至上とする狭量な仕事が駄目だからこそ、そこから逃げるためにもお金を配るべきではないのかと主張しているのがUBIなのですが。
そうやって、非生産的で低付加価値な仕事から人間がいなくなれば、そういった仕事そのものが消滅するか、生産的で高付加価値な仕事に転換するかもしれませんよ?
あまりにもUBI論者に対する悪口が過ぎますね。
ビル・ミッチェル教授などはその典型ですが、UBI論者と議論したことないのではないかと。
最後に図を作りましたよ。
以上です。