大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2020年1月22日(令和2年1月22日)
本日は多忙につき、再掲載とさせていただきます。
コメントに返信できず申し訳ありません。
※Muse様と黄昏のタロ様には心苦しい思いで一杯です。
内容紹介と書評
22年連続で世界一の債権国であり、どこよりも優れた生産供給能力を持ち、そして、世界最大のデフレギャップを有する日本。
この状況は80年前のアメリカと全く同じなのだ!
「政府財政の悪化」「デフレ不況」「少子化、晩婚化」「格差拡大」「賃金の低下、雇用状況の悪化」「年金、社会保障不安」「産業空洞化」
日本が抱えているこれらの問題は、すべて「経済が成長していない」ことが原因だ。
読者の方々にお伝えしたいのは「成長こそがすべての解」だということである。
日本経済が成長しさえすれば、日本の抱えている問題のほとんどが解決してしまう。
著者について
山本博一(やまもと・ひろかず)
2003年徳島大学工学部電気電子工学科卒。
2003年電気機器メーカーに入社。
電気回路設計技術者として勤務、現在は医療機器の開発設計に従事。
ある経済評論家の著書に触れ、経済の面白さに目覚める。
その後独学でマクロ経済を学習し、工学系技術者としての解析、分析能力を活かしてブログでの情報発信を開始する。
経済学の常識に捉われない経済指標の分析力と解説の分かりやすさを評価され、多数の読者を獲得する。
本業のかたわら「日本は財政危機ではない」という事実を周知させること、また日本経済を復活、継続発展させる方法を研究するために、広報活動を続けている。
【総評】★★★★☆
大変読みやすく、一気に読破してしまいました。非常に丁寧に論述しているなという印象です。
エントリータイトルにもありましたが、我が国日本にとっての贈答用経済本というジャンルが確立したのではないかと思います。
経済に対して全く知識がない、アベノミクスに関して全くわからないという一般庶民に対して啓蒙するための書籍としては最高峰かと存じます。
観点としては国家経済全体を論じた典型的な「マクロ経済本」です。
私のような某国立大学を卒業し、毎日三橋貴明氏のブログを読み漁っている人間にとっては物足りないと感じてしまいますが、そこはどの読者層を狙っているのかというお話とも絡みますのでこれ以上の言及は控えます。
各論:データや図表がやや小さすぎる
さてここからは辛口な批評をさせていただきます。
最初に「?」と思ったのは図表や統計データのサイズが小さいことです。
経済政策や国家経済を論じる上で図表や統計を使用することは、主張に説得力を持たせ、わかりやすくするための重要な手段です。
しかしながら、図表や統計データが小さすぎているため、少々わかりにくい点もございました。
具体的に申し上げれば、どのグラフがどの国家を示しているのかわかりにくい、数字が小さすぎて読みにくいという点がございました。
例えば、P13の日本と主要国のインフレ率、P34の主要国輸入依存度比較、P207のユーロ主要国の経済収支対GDP比の推移などが挙げられます。
これはもっと大き目に記載すべきでした。
もちろん、紙面の関係上できなかったことかもしれません。
しかし、一読者としましては残念に思います。
各論:円安に関する論評は素晴らしい
今度は甘口批評です。
アベノミクスに対する「円安になって食料やガソリンが高騰して生活が苦しくなる」という批判がございます。
それに対する山本博一氏の反論が素晴らしいの一言に尽きます。
まず、ガソリン価格の高騰の原因は必ずしも円安とは言い切れないと主張し、P173の円ードル為替レートとガソリン小売価格(東京)の推移というグラフを掲載しています。
ちなみにこのグラフで一カ所誤植がございます。2010年から2012年ごろのガソリン高に対するコメントは「円高なのにガソリン高」が適切ですね・・・蛇足かとは存じますが言及します。
円安との相関関係よりもガソリン価格の相関関係が深いことが一目瞭然です。
結論から申し上げれば、新興国による需要増大、中東の政情不安、投機資金の流入という要因によって価格変動しているのです。
詳しくは「 日本経済が頂点に立つこれだけの理由 」をお読みください(笑)。
また、円安に対する批判として「円安になると原材料コストも上昇するので、円安による輸出の価格競争力強化と相殺され、輸出は伸びない」P182より引用 という声もございます。
この点は私も漠然とではございますが、危機感を持っておりましたし、不安だった点でもございます。
山本氏は「日本や輸入品に付加価値が付け加えられて輸出されている点を忘れている」と主張されています。
ここからは私が簡単にまとめさせていただきます。
「輸入品をそのままの状態で何も加工せずに輸出するのであれば、円安による輸入価格の上昇と輸出による価格競争力の強化が相殺される」
「輸入品に相当程度の付加価値を付け加えて輸出するのであれば、円安のデメリット(輸入価格の上昇)よりも円安のメリット(輸出品の価格競争力の強化)が大きい」となります。
例えば、輸入金額が20円で、付加価値が上乗せされて100円で種出しようと考えているとします。
為替レートが1ドル100円、輸出先はアメリカとします。(輸入品そのものの価格変動はなしと仮定します)
これが、1ドル110円になったとします。
輸入金額が22円になり、輸出金額が110円になりました。
あれ??? 円安によって輸入価格が上昇しましたが、それ以上に輸出金額が上昇しましたね。
これは我が国日本のように高付加価値な生産品を多く製造している国家にとっては大助かりです。
新興国のように、あまり付加価値を上乗せできない国家にとっては苦しいことになるでしょう。
だから某国は必至に日本企業の技術を盗みまくろうとしてます。
さらに、円安になるということは輸入品の価格競争力を削ぎ落とし、相対的に国産品の価格競争力が強化されます。
平たく言えば、円安により輸入品の安さが薄まり「これしか安くないのなら、多少高くても国産品を買おう」となります。
これって内需拡大に寄与しますよね(笑)
デフレの時は円安誘導のための為替介入せず「財政出動と金融緩和」という内需拡大策を以てして円安にすればいいのです。
ここで欲を言わせてもらえば、円安に対する批判を封殺するためガソリン税の暫定税率分の廃止とか消費税を一時的に0%にするなどといった大胆な提言もしてほしかったと思います。
商品貨幣論はいただけない
唯一の難点は貨幣の起源について商品貨幣論を展開しているところです。
貨幣の起源について、物々交換から成り立ったという証拠はございません。
現代貨幣理論が周知されていない時期に出版されたので致し方ないと言わざるを得ません。
以上です。