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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年8月5日(令和元年8月5日)
現代貨幣理論への新たなる批判が寄せられる
本日は白井さゆり 慶応義塾大学教授が現代貨幣理論に関する批判を日経新聞電子版上にて行っていたので、取り上げてみたいと思います。
景気過熱で大幅なインフレになれば、増税で抑制し自国通貨を吸収(中銀当座預金を縮小)できるとの見解だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48124030S9A800C1KE8000/
自国通貨での増税はインフレ調整手段のほか、民間の自国通貨需要を高めその価値を維持する役割があると考える。
まず、景気が過熱して大幅なインフレ(例えば10%以上)になった場合の対処策は増税だけではありません。
歳出削減、政策金利の引き上げも有効な手段であると考えます。
また、所得税などは累進課税なので、景気の自動調節機能(ビルトインスタビライザー)で自然と増税になります。
一方、金融政策はゼロ%程度の金利政策を維持し、財政政策効果を最大限に高める黒子役に徹すべきだと主張する。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48124030S9A800C1KE8000/
利下げには「実効下限制約」があるほか、利下げをしても企業の成長期待や家計の収入期待が低迷していれば信用貸し出しは増えない。
利息の減少で債権者・預金者の収入が減ることで消費が減退し、債権者から債務者への不公平な所得移転も伴う。
金融政策においてゼロ金利政策を維持するということは現代貨幣理論で聞いたことがありません。
利息の減少とは、民間金融機関の貸出金利の低下のことだと推察しますが、貸出金利の低下による消費の減退について聞いたことはありません。
現代貨幣理論を支持する有識者の内、誰がそのようなことを主張しているのでしょうか。
MMTが機能するための3条件?
MMTが実際に機能するには少なくとも3条件を満たす必要があろう。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48124030S9A800C1KE8000/
第1に歳出で労働生産性を高めるインフラ、教育・研究開発などへの配分を優先させ、潜在成長率を高めてインフレリスクを下げることだ。
ここでいうところの潜在成長率とは何かという点が理解できません。
インフレリスクを下げる目的のために、潜在成長率を高めるということであれば、供給能力を高めるということなのだと推察します。
積極的なインフラ投資を行い、生産性を高めるための設備投資が増やすことができれば、インフレリスクを下げることができます。
MMT(現代貨幣理論)を機能させるための3条件として、第1は理解できます。
第2に自国通貨発行で歳出拡大を増やし、投資家のセンチメント(心理)に左右される債券市場での国債発行を減らし、かつ国内で外貨取引が横行する「ドル化」現象を回避することだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48124030S9A800C1KE8000/
ちょっと何を言っているのかわかりません。
投資家心理に左右される債権市場での国債発行を減らす?
国内において外貨取引が横行するドル化現象?
本当に何が何だかわけわかりません。
第3に民間部門は銀行・民間債務危機に陥らないよう中長期的に債務の持続性を維持することが必要だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48124030S9A800C1KE8000/
MMTによれば、政府債務拡大は民間部門の純資産を増やし将来の消費を可能にする利点がある一方で、民間債務拡大は民間純資産を減らし将来消費を抑制するので増やし続けられない。
誰かの資産は誰かの負債という原理原則を理解していたのであれば、このような条件は出てきません。
政府の債務拡大は民間経済の純資産を増やしますので、継続的に民間の資産を増やし続けられるように継続的に政府はお金を使うべきなのです。
政府がお金を使うということはそのお金の受け取り手がいるということです。
民間経済がそのお金の受け取りてなのですから、民間経済が債務危機に陥ることは政府支出の拡大を続ける限り考えにくいと思います。
もちろん、ミクロ的な観点からは債務危機に陥る家計、企業、金融機関等はあるかもしれません。
マクロ的に言えば、バブル崩壊後やリーマンショック後という特殊な要因がなければ、政府支出の拡大で民間経済の持続的な資産増加が見込まれます。
MMTの問題点とは?
白井さゆり氏は現代貨幣理論の問題点として、社会保障制度の持続性を日本国民に対して広報して、その持続性を信じてもらわなければ消費は増えないと主張しています。
現代貨幣理論を理解していないとしか思えません。
自国通貨建ての国債を発行する日本政府に財政的な予算制約はないのですから、社会保障制度を維持するためのお金が足りないということにはなりません。
さらに白井さゆり氏は歳出拡大によって人手不足が激化して、民間経済の萎縮が発生すると主張しています。
歳出拡大とは政府支出の拡大と同義です。
政府の支出は民間の所得なのですから、人手不足が激化したとしたら、歳出拡大によって増えた所得を元手にして給与や賃金を引き上げることができます。
そうしてより良い給料や賃金を提示し、労働者を効率的に雇用して、売り上げを最大化させた民間企業が生き残り、そうでない企業は淘汰されます。
ある意味健全な資本主義経済が出現することになります。
白井さゆり氏は民間経済の所得は増えないけれども、人手不足が激化するという想定をしているようです。
歳出拡大による民間経済の所得増を考えれば原理的にあり得ないと思います。
白井さゆり氏はもう少しMMT(現代貨幣理論)を勉強していただければ幸いに存じます。