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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2021年2月12日(令和3年2月12日)
就業保証プログラムとは何か
現代貨幣理論から導ける「最後の雇い手」もしくは就業保障プログラム(Job Guarantee Program)と呼ばれる政策をご紹介したいと思います。
内藤敦之著『内生的貨幣供給理論の再構築』を参考文献とし、一部引用しつつ、説明させていただきます。
いわゆる「最後の雇用者」政策論は、有効需要論に基づく非常に積極的な財政政策の一環として、主張されている。
引用元文献:内藤敦之『内生的貨幣供給理論の再構築』pp282より
これは、雇用政策の一種であり、公共支出による財政政策ではなく、公共部門が失業者を雇用するというものであり、ほぼ同時にWray(1998)の「最後の雇用者(Employer of Last Report,ELR)」政策およびMitchell and Watts(2002)の「雇用保障(Job Guarantee,JG)」政策といった名称で提唱されている。
この就業保証プログラムを我が国日本に適用するとなれば、日本政府もしくは地方自治体が働きたい人は誰でも雇う旨を宣言し、誰でも雇う際の賃金も公表し、最後の雇い手としての役割を果たすことになると思います。
雇い入れる際に、日本政府もしくは地方自治体が提示する賃金が実質的に最低賃金として機能します。
最低賃金を全国一律にして、さらに政治の力で引き上げることが可能になります。
不況期もしくは恐慌期において、失業者が増えた場合に雇用を維持することができ、好況期もしくは景気過熱期においては、政府及び地方自治体から民間企業へ労働力が移動します。
ある意味でのセーフティネット(安全網)として機能します。
これにはメリットがあり、失業による所得減少を最小限に抑制することができます。
失業手当や社会保障給付を最小限にすることができます。
失業に伴う、社会的費用を削減することができます。
失業に伴う社会的費用とは、人的資本の劣化(長期失業が招く労働力の腐食)、家族の崩壊、犯罪の増加、自殺の増加、医療費の増加などが含まれます。
この就業保証プログラムは強制ではなく、任意であり、労働する能力と意志のある者が最後の雇い手の対象になります。
なぜこのような政策が現代貨幣理論において論じられているかと申しますと、ヨーロッパやオーストラリアなどで高い失業率が継続していたからだそうです。
失業という問題が恒常的に発生する経済を分析するに当たり、就業を保障するような計画案が立案されたのではないかと推察します。
仕事内容に関しては、現時点で地方自治体や日本政府が担っている業務を失業者にも行ってもらうというワークシェアリングではなく、就業保証プログラムのために計画された非営利事業を行います。
完全雇用を達成するために、財政的予算制約が無い日本政府がプロジェクトを立ち上げて、無制限に雇用することで、社会全体の安定化を図るという一連の仕組みが就業保証プログラムなのです。
完全失業者をできるだけ少なくすることで、供給能力を毀損せず、不況下における所得の減少を最小限にすることが可能なので、ビルトイン・スタビライザーとして機能します。
私は現代貨幣理論の貨幣理論の部分や会計学的なお金の流れなどについては明確に支持しておりますが、就業保証プログラムに関しては懐疑的だったり、批判的だったりします。
本記事では就業保証プログラムに対する疑問や批判について触れませんので、ご興味がございましたら、過去記事をご覧ください。
※過去記事:就業保証プログラムのサボタージュ対策はプログラム参加拒否が一番か
仮に就業保証プログラムの実現が困難なのであれば、完全雇用を達成するためにどうすればいいのでしょうか。
公的職能訓練と公務員の増員が代替案
私は公的職能訓練(Public Off Job Training)と公務員の増員が必要だと考えます。
まず、不況期もしくは恐慌期においては、労働市場において優秀な人材が参入してきます。
その中には、かつて公務員を目指していても、やむを得ない理由で民間企業に就職した方もいらっしゃいます。
そのような方を期間限定ではなく、正規雇用者として政府及び地方自治体が雇用すればいいのです。
単純な公務員の増員です。
もちろん、賃金は他の正規雇用の公務員と同水準としていただきます。
費用はすべて日本政府が負担します。
国家安全保障上の理由から、自衛官を大量増員してもいいですし、地方自治体の職員を大量増員して、空き家の実態調査や所有者不明の土地の調査を本格化させるのでもよいでしょう。
公的職能訓練(Public Off Job Training)とは「公的機関が斡旋しいている職能訓練を受けることができて、その間は最低賃金が支払われる」というものです。
職能訓練を受けながら、最低賃金が貰えるということで、失業をきっかけとして、キャリアアップのための研修を受けたい人間にとっては朗報になります。
私のようにキャリアアップのための研修を受けたり、資格取得のための勉強をするのに二の足を踏むも多いのではないでしょうか。
なぜならば、その研修を受けている時間、その資格を勉強する時間においてお金が発生しないからです。
したがって、そのような研修を受けるよりも、一刻も早く就職活動をして、就業してお金を稼ぐようになることを最優先にするのが、合理的となります。
研修先は、ハローワークや職能訓練を実施している会社であれば、失業者が自らの意思で決めることができるものとし、職能訓練を受けた時間だけ、最低賃金を支払うことにします。
労働者の技能水準を引き上げることに効果的ですし、政府及び地方自治体が失業者を雇い入れることによるデメリットは全く発生しません。
限定的な給付金付き職業訓練が行われる
政府は生活費を受給しながらIT(情報技術)などの職業訓練が受けられる求職者支援制度を拡充する。
引用元:20万人に職業訓練、月収上限12万円に 求職支援拡充
無料の職業訓練と月10万円の手当が得られる要件を月収12万円以下にする。
受講者数を現状より7.5万人増やし、計20万人の受講を目指す。失業者や休業者の再就職を支援する。
私が就業保証プログラム(JGP)の代替案として提唱している給料を貰いながら職業訓練を受けることができる制度が拡充されます。
公的職能訓練(Public Off Job Training)と似た制度が存在しているようです。
無料の職業訓練と月10万円の手当が得られるそうです。
IT業界に来ていただけるなら、嬉しい限りです。
職業訓練の何が問題かと申しますと、上記でも申し上げた通り、職業訓練で賃金が発生しないため、生活費を賄えないという理由から受講が難しいという点なのです。
月10万円という手当は少ないと思いますので、せめて月15万円に引き上げつつ、1年間はプログラミング学習をさせてあげてほしいです。
情報系専門学校に通ったことの無い文系の人間でも、必死に1年間プログラミング学習をすれば、普通のWebサービスぐらいは作成できる能力が身に付きます。
そうなればIT業界でプログラマーとして働けますから、少なくとも失業の危険からは遠ざかることが可能です。
ある意味、摩擦的失業の解消にも役立ちます。
飲食業界など新型コロナウイルスで打撃を受けた産業は今後、従業員を増やすことに難色を示すでしょうから、別の成長産業へのジョブチェンジを推奨する必要がございます。
アトキンソンのようなデフレなのに中小企業の淘汰する政策を実行するよりも遥かに生産性が向上するでしょう。
以上です。