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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年6月30日(令和元年6月30日)
最後の雇い手とは何か
本日の記事は、現代貨幣理論における”最後の雇い手”もしくは雇用保障プログラム(Job Guarantee Program)をご紹介し、それは机上の空論なのではないか、
それは実務上の問題を多く抱える政策なので、代替案が必要なのではないかということを主張します。
いわゆる「最後の雇用者」政策論は、有効需要論に基づく非常に積極的な財政政策の一環として、主張されている。
内藤敦之『内生的貨幣供給理論の再構築』pp282より
これは、雇用政策の一種であり、公共支出による財政政策ではなく、公共部門が失業者を雇用するというものであり、ほぼ同時にWray(1998)の「最後の雇用者(Employer of Last Report,ELR)」政策およびMitchell and Watts(2002)の「雇用保障(Job Guarantee,JG)」政策といった名称で提唱されている。
なぜこのような政策が提案されているのかと申しますと、ヨーロッパやオーストラリアなどで高い失業率が継続していたからだそうです。
失業という問題が恒常的に発生する経済を分析するに当たり、雇用を保障するような計画案が出現したと解釈できます。
この最後の雇い手(JGP)を我が国日本に適用するとなれば、日本政府もしくは地方自治体が働きたい人は誰でも雇う旨を宣言し、誰でも雇う際の賃金も公表し、最後の雇い手としての役割を果たすことになると思います。
これにはメリットがあり、失業による所得減少を最小限に抑制することができます。
失業手当や社会保障給付を最小限にすることができます。
失業に伴う、社会的費用を削減することができます。
失業に伴う社会的費用とは、人的資本の劣化(長期失業が招く労働力の腐食)、家族の崩壊、犯罪の増加、自殺の増加、医療費の増加などが含まれます。
この最後の雇い手(JGP)は強制ではなく、任意であり、労働する能力と意志のある者が最後の雇い手の対象になります。
また、公的機関に雇用された労働者は解雇される可能性があります。
最後に、最後の雇い手(JGP)はすべての雇用問題を解決するような代物ではございません。
すべて解決するような都合のよいものはそうそうございますまい。
それでも漸進的に社会をより良い方向へ誘う責務が経済学者にはございますので、その心意気は見事という他ありません。
しかしながら、私は最後の雇い手(JGP)に反対です。
最後の雇い手は机上の空論である
私が最後の雇い手(JGP)に反対する理由は3つあります。
1、そもそも仕事があるのか
2、政府及び地方自治体で働くことが民間企業で評価されるのか
3、政府及び地方自治体にとっての足枷になる可能性が高いから
1に関して説明します。
日本政府及び地方自治体に、そもそも仕事があるのでしょうか。
民間人がいきなり政府機関の従業員となり、役に立つようなことができるのでしょうか。
日本政府及び地方自治体は民間のビジネスとは異なる業務をしており、ノウハウが必要です。
雇い入れた労働者の保有する技能に適した仕事を用意できるとは到底思えません。
2について説明します。
日本政府及び地方自治体で働くことを民間企業は評価するでしょうか。
労働者の保有する技能に適した仕事をしてこなかった者を民間企業の人事担当者はその就業経験を積極的に評価するとは思えません。
日本政府及び地方自治体で働くことを実質的な失業期間を見なし、採用に難色を示すかもしれません。
長期失業が招く労働力の腐食を防ぐ効果が極めて薄いのではないでしょうか。
3について説明します。
日本政府や地方自治体が最後の雇い手としての役割を果たし、失業者を雇うということは、個人情報の宝庫に土足で足を踏み入れる人を増やすようなものです。
日雇い労働しか経験していない肉体労働者、昨今の社会情勢に疎い高齢者、社会経験が全くない高卒者、それらも雇うということに他なりません。
言葉は悪いですが、低技能どころではなく、業務に従事するための前提条件を満たさない者にも、個人情報を扱う公的機関の仕事を任せるのでしょうか。
はっきりと申し上げれば、個人情報の流出事件が頻発し、社会的な大混乱を招く可能性が高くなってしまいます。
個人情報に全く触れない仕事を任せるとなると、仕事の幅がかなり狭まってしまい、労働者の技能の向上は見込めません。
さらに付言するならば、日本政府及び地方自治体が雇い入れた労働者が何らかの問題行動を起こしてしまった場合はどうするのでしょうか。
民間企業であれば、その民間企業の信用がガタ落ちして、最悪廃業になるだけで済みます。
しかしながら、政府及び地方自治体の信用がガタ落ちするとなれば、国家存亡の危機ということも夢物語では無くなります。
以上の理由から、最後の雇い手は机上の空論であり、数限りない問題を抱える欠陥計画であり、経済政策における悪手であると言えます。
神の見えざる手ですらなく、政府の意図的な悪手なのです。
公的職能訓練と公務員の増員
では、失業問題に対してどうすればいいのか、長期的失業が招く労働力の腐食をどのようにして防げばいいのかという点について説明します。
私は公的職能訓練(Public Off Job Training)と公務員の増員が必要だと考えます。
まず、不況期もしくは恐慌期においては、労働市場において優秀な人材が参入してきます。
その中には、かつて公務員を目指していても、やむを得ない理由で民間企業に就職した方もいらっしゃいます。
そのような方を期間限定ではなく、正規雇用者として政府及び地方自治体が雇用すればいいのです。
単純な公務員の増員です。
もちろん、賃金は他の正規雇用の公務員と同水準としていただきます。
費用はすべて日本政府が負担します。
国家安全保障上の理由から、自衛官を大量増員してもいいですし、地方自治体の職員を大量増員して、高齢者のお宅へ訪問し、孤独死予防活動に従事すればよいのではないでしょうか。
高齢者のお宅訪問は人的資本が無ければ実現不可能ですし、命の瀬戸際という場合もあるでしょうから、極めて重要な任務になることでしょう。
公的職能訓練(Public Off Job Training) とは「公的機関が斡旋しいている職能訓練を受ける。その間は最低賃金が支払われる」というものです。
職能訓練を受けながら、最低賃金が貰えるということで、失業をきっかけとして、キャリアアップのための研修を受けたい人間にとっては朗報になります。
私のようにキャリアアップのための研修を受けたり、資格取得のための勉強をするのに二の足を踏むも多いのではないでしょうか。
なぜならば、その研修を受けている時間、その資格を勉強する時間においてお金が発生しないからです。
したがって、そのような研修を受けるよりも、一刻も早く就職活動をして、就業してお金を稼ぐようになることを最優先にするのが、合理的となります。
研修先は、ハローワークや職能訓練を実施している会社であれば、失業者が自らの意思で決めることができるものとし、職能訓練を受けた時間だけ、最低賃金を支払うことにします。
労働者の技能水準を引き上げることに効果的ですし、政府及び地方自治体が失業者を雇い入れることによるデメリットは全く発生しません。
長期失業が招く労働力の腐食を防ぐことが可能となります。
以上です。