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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年8月11日(令和元年8月11日)
知識ゼロからわかるMMT入門を紹介する
本日は現代貨幣理論を全く知らない読者の方にもお勧めできる書籍をご紹介したいと思います。
三橋貴明著『知識ゼロからわかるMMT入門』2019年、経営科学出版
物々交換経済の発展形としてお金が誕生したわけではない
現代貨幣理論の初心者にもわかりやすく、内容が簡潔で理解がしやすいと思います。
以下において、内容を簡単にご紹介したいと思います。
まず、貨幣の起源に関する歴史に関しての説明がとても簡略化されていて素晴らしいと思いました。
三橋貴明氏(以下敬称略)は本書において、間違った貨幣観の説明として、物々交換の発展形として「お金」が生まれたという考え方を説明しています。
お金が未だ生まれていない世界において、ある人が物やサービスをほしいと思ったとして、物々交換をしようと考えます。
しかしながら、通常、物々交換においては取引相手のニーズと自身が提供できる物やサービスは一致しません。
そのような場合「交換可能な何らかの商品」を保有していれば、それを媒体として取引をすることができます。
例えば、塩、たばこ、貝殻、砂糖、金属などがそれに該当します。
保存することが容易で、腐敗することも無ければ、価値が目減りすることも無いものが好まれます。
三橋貴明は「人類の歴史上、一つの社会の中で物々交換経済が成立したことはない。さらにはおカネは商業用具ではない。単なる債務と債権の記録、データだ」と主張します。
参考: 『知識ゼロからわかるMMT入門』 pp35より
貨幣の成立条件とは
三橋貴明はお金の成立条件として、以下の4つを挙げています。
1、お金の単位(円、ドル、ユーロなど)
2、債務と債権のデータを記録する仕組み
3、譲渡性
4、担保
三橋貴明が一番重視しているのは、2の「データ」という部分なのだそうです。
債務と債権を記録することができれば、お金は成立するため「モノ(物体)」という実体は不要です。
1万円札や100円玉には債務と債権の記録が印字されており、白銅の円盤や紙切れそのものに価値があるため、お金として成立しているわけではありません。
銀行預金なども債務と債権の記録のための通帳があれば、お金として成立します。
今時は、お金は口座振り込みですし、クレジットカードなどを使用すれば、実物のお金(日本銀行券や硬貨)を介さなくても、お金の支払いが可能です。
さらに付言するのであれば、1のお金の単位が無ければ、物やサービスの価値を計測することができないため、貨幣として成り立たないでしょう。
そして、貨幣の受け取りを拒否されてしまったら、それは決済機能や支払い機能を有していないわけですから、お金とは呼べなくなります。
4の担保に関しては、三橋貴明は銀行預金の例を挙げて説明しています。
銀行は、通帳に記入するだけで銀行預金を生み出すことができます。
これを貨幣生成(私なりの言い方をするのであれば貨幣創造)と言います。
その場合の担保とは、お金の借りてが「返済できる」という見込み、つまりは与信を担保に銀行預金を生み出していると言えます。
私の考えとして補足させていただくと、現金(不兌換通貨)における担保とは、現金を渡すことによって、しっかりとその額面分の価値のある物やサービスを提供してくれるという信用が担保なのではないかと考えています。
貨幣生成(貨幣創造)とは何か
三橋貴明は現代貨幣理論において重要な貨幣生成(私なりに言えば貨幣創造)を本書において説明しています。
貨幣生成とはMoney Creationの日本語訳のことであり、商業銀行において、お金の借りてに返済する意思と返済できる経済力があれば、論理的に「無限」に銀行預金を発行できます。
しかも、銀行預金の発行のためには、何らかの元手が必要なわけではありません。
現在の銀行は準備預金制度により、預金の一定比率以上の金額の日銀当座預金を保有することを義務付けられています。
その日銀当座預金を引き出す形で、銀行は日本銀行から現金紙幣を受け取ることができます。
したがって、元手がない状況で、銀行預金を発行したとしてもすぐに現金紙幣が無くて困るということはあり得ません。
銀行に預けられて現金を商業銀行が個人や企業に貸し付けて、お金がどんどん膨らんでいくという「信用創造」は嘘であると主張しています。
「信用創造」は預けられた現金紙幣という制約がある上で、個人や民間企業に貸し付けているという説明がなされているため、現実の銀行業務において虚偽の説明をしています。
三橋貴明はさらに次のように主張しています。
(前略)
参考: 『知識ゼロからわかるMMT入門』 pp88より
つまりは、銀行が「ゼロ」からお金を発行することこそが資本主義の基本なのだ。
貨幣生成が資本主義の基本であるというのは至言と言えましょう。
上記のような重要な内容以外に、政府支出の上限はインフレ率であるとか、自国通貨を持ち、自国通貨建ての国債を発行している政府は財政的予算制約には直面しないなど、私も主張していることを説明しています。
知識ゼロからわかるMMT入門に参考文献が記載されていない
最後になりますが、本書において理解できないところがございます。
貨幣に関する説明で、歴史的な考察などもあり、どう考えても参考文献を踏まえた上でのMMT入門だと思います。
しかしながら、参考文献を明記したところが見当たりません。
これでは、説得力が減損してしまいます。
私のように貨幣の歴史書や、現代貨幣理論に関する書籍をしっかりと読み込むような人間であれば気になりませんが、全くの初心者では、参考文献の記載がないから信じていいのかわからないという読者もいるのではないでしょうか。
以上です。