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反逆する武士

現代貨幣理論

ジョン・ローの不換紙幣導入と平和の経済的帰結。経済情勢への無理解

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貨幣論の革新者たち

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2022年6月5日(令和4年6月5日)

本日は現代貨幣理論に関して新たに寄せられた批判に対して反論していく記事です。

現代貨幣理論の玄人以外には刺さらない記事だと思いますが、備忘録的に記事にしたいと思います。

現代貨幣理論に対する新たなる批判が寄せられる

ジョン・ローのお金も、ハイパー・インフレを起こしたマルクも、実物の価値あるもの(たとえば金とか土地とか)とひもづけていない、完全に信用だけで成り立っていたお金だった。
そしてこうした信用だけのお金って、投機にひどく弱い。
MMTが論ずるのも信用だけで成り立つお金であり、投機に脆弱な問題が解決できていない、という点が青木氏の指摘。
なるほどなあ、と思う。

引用元:MMTと「『お金』崩壊」

shinshinohara氏(以下敬称略)が『お金』崩壊という新書を出版している青木秀和氏(以下敬称略)によるMMT勉強会で学習されたことをnoteにまとめられたのが上記引用元記事のようです。

18世紀のフランスにて導入されたジョン・ロー(経済理論家)の不換紙幣と第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレという経済事象を取り上げています。

青木秀和は、信用だけのお金は投機に弱いという問題が解決できていないという批判がなされています。

現代貨幣理論は貨幣の起源、貨幣がなぜ国家経済において流通しているのか、銀行での貨幣創造、中央政府がお金を使う場合の会計的事実を説明している理論なので、問題解決するための政策ではありません。

現代貨幣理論が内包している政策とは、完全雇用を達成するための就業保証プログラムだけです。
※参考記事:就業保証プログラムの実現可能性について懐疑的な現代貨幣理論理解者

不換紙幣が価値を失うプロセスを軽視するというのは卑怯

実物(金、土地など)と紐づけられていない不換紙幣が投機に弱いという批判はその批判そのものがかなり的外れと言えます。

なぜならば、不換紙幣そのものが投機の対象になったわけではなく、あくまで物やサービスの価格が上昇してしまったため、相対的に貨幣価値が下落してしまったからです。

不換紙幣そのものが市場で大量に売り買いされており、その価値が激しく毀損したわけではありません。

投機に弱いという意味合いでの批判ではなく、価値が激しく毀損してしまい、ハイパーインフレになってしまうという批判だったとしても、それは現代貨幣理論に対して向けられる批判としては不適当です。

ハイパーインフレに至るまでのプロセスを、MMTと「『お金』崩壊」という記事の中で意図的に隠しているのではないかと疑わざるを得ません。

現代貨幣理論においては、政府支出の上限はインフレ率であると説明されております。
また、現代貨幣理論に基づく政策が仮に積極財政だったとしても過度なインフレにならない限りという注釈が付きます。

そういった事情も含めて的外れな批判としか言いようがありません。

ヴェルサイユ条約の経済的帰結

例えば、第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレに関しては、第一次世界大戦に敗北したドイツは莫大な賠償金を支払うために紙幣を刷り過ぎてしまいました。

また、第一次世界大戦に敗北したため、ルール工業地帯という領土を割譲するしかありませんでした。

したがって、第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレは、供給低下型物価上昇と紙幣乱発型物価上昇のコラボレーションでした。

物やサービスの価格とは需要と供給のバランスで決まります。
ルール工業地帯という供給元が奪われ、物やサービスを購入するための紙幣を大量に刷り過ぎてしまったら、需要過多で供給過少になります。

どう考えても現代貨幣理論以前の問題として、過度なインフレになる条件が整ってしまっていたのです。

ドイツはヴェルサイユ条約の被害者であり、ハイパーインフレは当然の経済的帰結でした。
※参考:ジョン・メイナード・ケインズ『平和の経済的帰結

ジョン・ローは世界で初めて不換紙幣を導入

スコットランド出身のジョン・ローはフランスにて不換紙幣を導入したことで有名です。
※どのような経緯があってスコットランド出身のジョン・ローがフランスで不換紙幣を導入するかに至ったかに関してはこの記事では割愛します。

ローは外国為替銀行を説き伏せてネットワークを作り、海外貿易の決済にバンク・ジェネラルの銀行券を使えるようにしました。
さらにオルレアン公は、税金はすべて銀行券で支払われなくてはならないと命じました。
効果はてきめんでした。
銀行券は広く流通し、貿易を刺激するようになったのです。

引用元:ジョン・ローの奇策「ミシシッピ会社事件」

ジョン・ローはフランスの民間銀行「バンク・ジェネラル」が発行する銀行券を海外決済で利用できるようにして、租税納付の手段として定めました。

その後民間銀行「バンク・ジェネラル」は国有化され、王室銀行(バンク・ロワイヤル)となりました。

王室銀行(バンク・ロワイヤル)の代表者であるジョン・ローは通貨発行権に強い影響を持つようになります。

その後、王室銀行(バンク・ロワイヤル)が発行する銀行券は世界で初めて、貴金属と交換できる保証の失われた銀行券、つまりは不換紙幣となりました。

ミシシッピ川流域の開発事業という詐欺

現代貨幣理論における租税貨幣論とも整合性がございますので、ここまでは現代貨幣理論的にも矛盾はございません。

ただ、ジョン・ローは現代貨幣理論以前の問題を巻き起こしました。

ジョン・ローは「西方会社」という企業を作る許可をオルレアン公から得ることができました。

当時フランスの植民地だったアメリカのルイジアナ州のミシシッピ川流域は未開発の土地でした。

その土地を開発することで莫大な富を得られると宣伝して「西方会社」の株式を新規発行し、フランスの国債と交換するように呼びかけました。

その当時の国債は返済される見込みが薄いことから額面から割り引かれた金額で取引されておりましたが、額面通りの金額分の株式との交換を提案していました。

※参考記事:脱獄犯から財務大臣に! 天才ギャンブラーの末路

ミシシッピバブルの醸成

フランス人はその呼び掛けに呼応して「西方会社」の株式を購入することになりました。
その後、ジョン・ローは交易権を持つ会社を買収して「西方会社」を「インド会社」に名称変更して世間からは「ミシシッピ会社」と呼ばれました。

「ミシシッピ会社」はフランスの間接税をすべて徴収する権利を獲得して、交易と徴税を牛耳るフランス経済を左右するレベルの巨大企業になりました。

その後「ミシシッピ会社」と王室銀行(バンク・ロワイヤル)が統合されます。

※参考:ジョン・ローの奇策「ミシシッピ会社事件」

フランスの国債を全て買い取ると宣言したジョン・ローは「ミシシッピ会社」の株式をさらに新規発行して、株価爆上げのバブルが醸成されました。

独占企業で通貨発行権を保有する巨大企業が発行する株式ですから、人々は群がりますので、株価爆上げは当然の帰結と言えましょう。

フランス国債を「ミシシッピ会社」の株式に交換した人々は儲かります。

さらに「ミシシッピ会社」の株式を保有しているだけで儲かりますから、フランスは好景気になり不換紙幣が大量に出回ることになります。

ミシシッピ・バブルの崩壊

もちろん、ミシシッピ川流域の開発事業なんて、詐欺のようなものですから「ミシシッピ会社」の株価は暴落することになります。

ミシシッピ・バブルの崩壊と後世に語りつがれることになります。
実態が無い幽霊のような会社の株に不安感を持ってしまった人々が売りに転じてしまったことがきっかけでした。

その当時の「ミシシッピ会社」は銀行券も発行していた企業と統合されていましたから「ミシシッピ会社」の信用崩壊はそれすなわち不換紙幣の信用崩壊につながります。

一七二〇年一月に最高値の一万八千リーブルをつけていたミシシッピ会社の株価は、十月には二千リーブルにまで大暴落し、株式市場は人々の阿鼻叫喚(あびきょうかん)で覆われた。
バンク・ロワイアルの銀行券の信用も完全に失われ、誰も受け取ろうとはしなくなったため、経済取引は元の金貨と銀貨の取引に逆戻りしてしまう。

引用元:シュンペーターも絶賛!「脱獄した天才経済学者」の末路

管理通貨制度は崩壊して金属での取引の時代に逆行することになります。

ミシシッピ会社という特殊事例

さて、大雑把ではございますが不換紙幣の導入と信用崩壊の流れを説明しました。

ジョン・ローの不換紙幣の導入と崩壊に関しては、現代貨幣理論以前の問題だと思います。

現在において、日本銀行は発券銀行ではございますが、事実上日本政府の子会社のようなものですし、民間のビジネスに手を出しているわけではございません。

また、交易権と徴税権を保有している独占的企業というわけではございません。

かなり特殊な企業形態での失敗が原因で管理通貨制度が崩壊したのであって、現代の先進国でそのようなことが発生するとは思えません。

総括:現代貨幣理論を学ぶ前に経済情勢を学ぶ必要あり

さて、話をshinshinohara及びMMTと「『お金』崩壊」に戻したいと思います。

現代貨幣理論を学ぶためには、現代貨幣理論の原典(レイ、ケルトン、ミッチェルなど)を直接読み、それを自分なりに咀嚼することが必要です。

また、一般的な経済情勢を学ぶ必要がありますね。
ジョン・ローの不換紙幣の件はあまりメジャーではございませんが、ドイツのハイパーインフレの件に関しては中学高校で学習する内容です。

経済について無知な人間はやはり認知が歪んでしまう傾向があり、経済理論を経済問題すべてを解決する処方箋と誤解してしまう傾向にあるようです。

そんな魔法ありませんよ。

以上です。

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