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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2022年1月29日(令和4年1月29日)
現代貨幣理論という表現すら忌避するのか?
岸田文雄首相は26日午後の衆院予算委員会で、金融政策に関して、安倍晋三政権と同様に日銀が2%の物価目標をもとに金融政策を行う方針を政権で確認している、と語った。
引用元:日銀引き受け前提の財政政策は国の信頼失う、MMT採用せず=岸田首相
また、日銀の国債引き受けを前提としたいわゆる現代金融理論(MMT)に基づく政策は国の信頼を失うとして採用していない、と述べた。
まず申し上げたいのが、MMTは現代金融理論ではなく現代貨幣理論の略称です。
この件に関しては岸田総理が悪いわけではなく、上記引用元記事を作成した記者に問題があります。
現代貨幣理論という名称を忌避しているのではないかという疑念がございます。
理論の名称すらまともに調べずに記事にするとはロイター通信としての誇りは無いのでしょうか。
また、国の信頼を失うという抽象的な答弁に終始する岸田総理に正しい財政観などを求めるべきではありません。
ただ単に何も考えていないだけです。
そして、現代貨幣理論(MMT)に基づく政策は日銀の国債引き受けを前提としていません。
現代貨幣理論(MMT)に基づく財政政策は日銀の国債引き受けを実施しなくても、問題なく実行が可能です。
この日銀の国債引き受けを実施しなくても財政政策は実行可能という点は後述します。
ただ、日銀の国債引き受けを前提とするか否かに関係なく、民間企業の供給能力を超えた財政政策を実行した場合、インフレが発生しますし、それが過度なインフレになってしまった場合は、インフレの原因を正しく把握して適切に対処する必要があるというだけなのです。
日銀の国債引き受けが無かったとしても何も困らない
それでは、日銀の国債引き受けを前提とせず、民間の金融機関が政府に対して貸すお金が枯渇することは原理的にあり得ないことを説明します。
今回は図を用いましょう。
上記の図は日本政府が公共投資を行う場合を例として、お金や預金がどのようになるのかという点を表しています。
できるだけ丁寧かつ、順序立てて説明したいと思います。
①日本政府が国債を10兆円分発行して、民間の銀行が10兆円分の国債を購入する。
その際、民間の銀行が保有する「日銀当座預金」から10兆円差し引かれる。
はい。
ここで「日銀当座預金」という用語が出てきます。
これも難しい単語です。
日本銀行のHPから一部引用致します。
日本銀行当座預金とは、日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金のことです。「日銀当座預金」、「日銀当預」などと呼ばれることもあります。
引用元:日本銀行当座預金とは何ですか? 利息は付きますか?
つまり、民間の銀行が保有している日本銀行の口座です。
我々のような一般の日本国民は、民間の銀行の口座を持ってますよね。
それと同じように、民間の銀行が持っている日本銀行の口座があります。
日本国内の民間の銀行は日本銀行の口座を保有しなければならず、ある一定割合のお金を預けなればなりません。
※これ以上は極端に難しいので割愛します。とりあえず、民間の銀行が日本銀行の口座を開設しているのだなと理解していれば問題ありません。
本題に戻りましょう。
②日本政府が政府小切手(10兆円分)を発行し、民間企業に河川の氾濫で壊れた橋を修復するように依頼する。
民間企業は政府小切手(10兆円分)を受け取る。
③民間企業は受け取った政府小切手(10兆円分)を決済可能な銀行預金に換えるため、民間の銀行に政府小切手を持っていく。
民間の銀行は受け取った政府小切手に記載されたお金の分だけ民間企業の預金を増やす。
※この段階で民間企業の銀行口座には10兆円が振り込まれます。
④民間の銀行は政府小切手(10兆円分)を日本銀行へ持ち込む。
日本銀行は政府小切手に記載された分(10兆円)のお金を民間の銀行の「日銀当座預金」に振り込む。
この時点でお分かりかと思います。
①において、「日銀当座預金」から10兆円が差し引かれるのですが、④において、「日銀当座預金」に10兆円が振り込まれるので、プラスマイナス”0”なのです。
プラスマイナス”0”になるものがどうやったら枯渇するのかわかりません。
日本政府に貸し出すお金が無くなるということが現実的にはあり得ないということになります。
日本政府は日銀の国債引き受けが無くとも財政政策を実行することができます。
また、上記のオペレーションで民間金融機関の預金は減っておりません。
むしろ公共投資で預金が増えます。
政府支出の大きさは名目的な金額で計測するべきではない
これまでで最大だったのは新型コロナの感染拡大を受けて20年4月に閣議決定された緊急経済対策で、財政支出額は48.4兆円だった。
引用元:経済対策、財政支出40兆円超に ばらまき色強く
リーマン危機後の09年4月にまとめた国費ベース15.4兆円の経済対策と比べても突出して大きかったが、今回はそれと肩を並べる規模になる。
私は政府支出の大きさを名目支出額で判断するのは誤りだと思います。
日本政府は自国通貨発行権がございますから、お金を無尽蔵に刷ることが可能です。
ただ、無尽蔵にお金を支出して民間経済の供給能力を超えてしまうと過度なインフレになり、低所得者が物やサービスを手に入れるのが難しい経済が現実のものになるかもしれません。
そういったことを避けるためにも、政府支出の上限はインフレ率であるべきなのです。
言い換えるならば、インフレにできないレベルの政府支出なのであれば、どんなに名目支出額が大きいものであっても過少支出と言えます。
我が国日本の2021年9月のコアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数)は対前年同月比マイナス0.5%でした。
※総務省統計局『2020年基準 消費者物価指数 全国 2021年(令和3年)9月分 (2021年10月22日公表)』より
どう考えてもデフレが継続している現状がございます。
これでコアコアCPIがマイナスから脱却できない、または2%に到達することができないということであれば、岸田総理が満を持して策定した経済対策は規模が小さいということになります。
※参考記事:消費者物価指数の算出基準を改定。デフレが予想以上に深刻化している
以上です。