大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2020年11月7日(令和2年11月7日)
完全失業率が3%と横ばいだが・・・
総務省が10月30日に発表した9月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は8月と比べて3.0%と横ばいでした。
※参考記事:9月の完全失業率、3.0%で横ばい 休業者数、2月以来の低水準
完全失業者数(季節調整値)は8月と比べて1万人増の206万人でした。
非自発的な離職は6万人増、自己都合退職は3万人増え、新規求職は2万人減少しました。
雇用者(季節調整値)が8月だと約5937万人なのですが、9月になって約5950万人となり、底打ち感はありますね。
※参考資料:労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)9月分結果の第23表 主要項目の季節調整値(TCI)(エクセル:24KB) (労働力人口,就業者数,雇用者数,完全失業者数,非労働力人口,完全失業率などの季節調整値)
私は、完全失業率を予想しておりまして、2020年10月で完全失業率が3.6~3.8%になると予想しておりました。
どうやら完全失業率においては、私の予想を下回るような水準になる可能性が高まりました。
雇用調整助成金の拡充などの政策効果が出ている結果なのではないかと推察します。
復習:完全失業率の定義とは
本記事において「完全失業率」の定義を復習しましょう。
完全失業者の定義についての3条件が総務省統計局のHPに明示されています。
参照URL:http://www.stat.go.jp/data/roudou/qa-1.htm
(1)「仕事に就いていない」
(2)「仕事があればすぐつくことができる」
(3)「仕事を探す活動をしていた」
3条件を満たす人だけが、完全失業者として統計に反映されるのです。
あまりにも景気が悪くて求職活動をあきらめてしまった人、求職活動するための資金が無い人、就職できない絶望から自殺してしまった若者は完全失業者に含まれません。
なぜ完全雇用を目指すべきなのか
なぜ経済政策を立案する際に完全雇用を目指すべきなのでしょうか。
なぜ完全失業率が高まると国家経済にとって問題なのでしょうか。
理由は大きく4つあると思います。
1、犯罪の抑止
2、自殺の抑止
3、所得減少の抑止
4、労働力の腐食を防ぐため
1に関して説明します。
日本国民が失業し、貯蓄も無くなり、何も失うことが無くなった場合に、犯罪に走る可能性が高まってしまいます。
ご飯をお金を支払って食べることができないのであれば、盗むしかないと考えるかもしれません。
背に腹は代えられないと思うことでしょう。
スーパーで万引きしてしまう人も、その背景には失業や貧困があります。
万引きは窃盗です。
取り締まるべき犯罪です。
完全雇用を目指し、失業や貧困を背景とした犯罪を抑止し、治安維持を図るべきなのです。
2に関して説明します。
労働とは、生きるための所得を稼ぐための手段ですが、それだけとは言えません。
労働とは生きがいであり、自己実現のための手段でもあります。
社会のために役に立っているという充実感を得るために働いているのです。
それを奪われるのが、失業です。
その精神的な打撃と失望感から、自殺をしてしまう人が増えてしまうのを防ぐため、完全雇用を目指すべきなのです。
私は、某国立大学に在学中から就職活動に励んでおりましたが、リーマンショックの後ということもあり、就職できませんでした。
某国立大学を卒業後、何とか非正規の派遣社員、有期契約の契約社員、期限を定めない正社員となり、今日に至っています。
就職できなかったことは、自尊心が傷つき、精神的に崩壊する一歩手前でした。
私だけならともかく、私以外の日本国民にはそのような苦しみを味わってほしくないと心の底から願っています。
3について説明します。
失業とは、労働によって得られる所得を奪われることに他なりません。
生きるために必要な糧を奪われてしまうと、消費が減り、投資が減り、お金の巡りが悪くなってしまいます。
保有している財産を売り、就職活動のために奔走しなければなりません。
民間企業の売り上げが落ち、景気が悪くなってしまいます。
長期失業による労働力腐食効果
4について説明します。
ポール・クルーグマン著『さっさと不況を終わらせろ』を参考文献として、説明させていただきますと、失業、もっと言えば長期失業は労働力を腐食させる効果があります。
長期失業は本当にスキルを低下させて、雇うのに不適格な存在にしてしまうのだろうか?
ポール・クルーグマン著『さっさと不況を終わらせろ』 pp24より
長期失業の一人だと言う事実は、そもそもその人が負け犬だったという証なんだろうか?
ちがうかもしれないが、多くの雇い主はそう考えがちで、当の労働者にとってはそれで話が決まってしまう。
この経済で職を失えば、別の職を見つけるのはとても難しい。
失業が長く続けば、雇用不適格と思われてしまう。
つまり、長期失業により、失業者は雇用不適格人材としての烙印を押されてしまいます。
再雇用が難しくなってしまうのです。
この指摘はとても納得できます。
なぜならば、長期失業が招く労働力の腐食によって私も苦労したからです。
私は何度か転職しておりますが(同世代の中では転職回数が多い方だと自負しております)転職の際の面接で必ず聞かれることがございます。
”就業期間と就業期間の間に空白の期間がありますが、それはなぜですか”
上記の質問の意図は明白です。
就業期間と就業期間の間があまりにも長く、正当な理由がない場合は、問題のある人材と判断されます。
要するに、採用するに値する人材なのか見極めたいのです。
私はそれほど長期間の失業を経験してはおりませんが、それでも失業期間があるというハンディキャップに随分と苦しめられました。
失業の苦しみを味わっているからこそ、採用されたら簡単には辞めることはないという発想にはならないようです。
また、長期失業は労働者の技能向上という点でも由々しき問題です。
労働者の技能が向上する機会を得られないということは、民間企業の生産性の向上を阻害してしまいます。
一つは長期失業のもたらす腐食効果だ。
ポール・クルーグマン著『さっさと不況を終わらせろ』 pp30より
長期にわたり失業している労働者が雇うに値しないと思われるようになったら、それは経済の実質的な労働力、ひいてはその生産能力が長期的に減少したということだ。
技能を活用しない職につくしかない大学新卒者の命運も、ある程度は似ている。
時間がたつと、少なくとも背印材的な雇用主の目から見れば、彼らは低技能労働者の地位に貶められてしまうかもしれない。
つまり、教育が無駄になってしまうということだ。
ポール・クルーグマンは現実の経済をよくご理解いただいている経済学者であるようです。
私の経験からも、納得にいく話でございます。
IT業界においても、最新の技術にマッチアップしている現場で長く働いているか、そうでないかでその技能水準が決まることが多く、生産性に圧倒的な差が生まれます。
コロナ出向の幕開けか
厚生労働省は雇用を維持する企業を支援する雇用調整助成金で、従業員を人材需要のある他社に出向させる企業への助成を手厚くする。
引用元:出向も雇調金手厚く 厚労省方針、労働移動促す
新型コロナウイルス禍による景気の底割れを防ぐ対策を一歩進め、柔軟な労働移動を促す手段として活用する。
厚生労働省は従業員を需要のある他者に出向させる企業への助成を手厚くする方針のようです。
グループ会社への出向ではなく、独立した他社への出向に対して助成金を支給するようです。
ANAなどの航空会社が他社に出向を命じるような事例もあり、出向であれば失業の不安を和らげつつ、ニーズのある分野への労働移動を進められ、単純に休業するよりも出向先で新しい技能を得られる利点もあるとのこと。
私はこの動きを企業間の労働移動の流動化だと認識しております。
確かに、日本経済全体を見れば妥当な助成金だと思いますが、出向者にとっては苦痛かもしれません。
その出向者の希望に合致した仕事ができるのか、その出向者の希望の待遇なのか、慣れない仕事でストレスを受けたら、メンタル管理を誰がするのかという疑問もございます。
コロナ出向となると、本社に戻ることができない可能性もございますので、この動向は要経過観察だと言えます。
以上です。