大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年12月24日(令和元年12月24日)
地政学の逆襲の内容紹介
今まさに起きている、東欧をめぐるロシアと西側諸国との争いを予言!
●なぜウクライナはロシアを変えうる存在なのか?
●欧州債務危機はなぜ起きたのか?
●シリアはなぜ国家としてのアイデンティティが弱いのか?
●中国の勢力はどのように拡大していくのか?
●なぜ米国は、イラク・アフガニスタンよりもメキシコを重視すべきなのか?etc…
地理と歴史をひも解くことで、“世界で次に起こること"が浮き彫りになる――
世界的なインテリジェンス企業「ストラトフォー」の地政学チーフアナリストが未来を徹底予測!
ニューヨークタイムズ・ベストセラー!
【目次】
日本語版によせて
序章 失われた地理感覚を求めて
●第1部 空間をめぐる競争
第1章 ポスト冷戦の世界
第2章 地理の逆襲
第3章 ヘロドトスとその継承者たち
第4章 ユーラシア回転軸理論
第5章 ナチスによる歪曲
第6章 リムランド理論
第7章 シーパワーの魅惑
第8章 空間の危機
●第2部 21世紀初めの世界地図
第9章 ヨーロッパの統合
第10章 拡大するロシア
第11章 大中華圏
第12章 インドのジレンマ
第13章 中軸国家イラン
第14章 旧オスマン帝国
●第3部 アメリカの大戦略
第15章 岐路に立つメキシコ
★唯一永続的なのは、地図上に占める位置だけだ。
だからこそ激動の時代には、地図が重要な意味をもってくる。
政治的基盤が足元から大きくゆらいでいる今の時代、地図は次に起こりそうなことを予測する歴史的論理を見抜く手がかりになる。
世界的インテリジェンス企業「ストラトフォー」の地政学チーフアナリストが徹底解読!
以上はAmazonより引用させていただきました。
以下は反逆する武士 uematu tubasaの評価
星の数 ★★★★☆
【総評】
内容は極度に難解であり、複雑怪奇。
しかしながら、重要情報が満載で、地政学と国際政治学における現実主義を学んでいる人間であれば、驚嘆するほどの高品質地政学書である。
内容だけならば、星5つなのだが、一般人には難解すぎるという点を考慮して星4つ。
私のように、地政学的な話題に興味関心があり、知識の習得に対して貪欲で、リアリズムに対する理解が深い人間でも通読するのに3日要したほどの大著である。
あまりの難解さに途中で読むのをあきらめそうになることほぼ確実である。
したがって、本書を熟読することによって国家指導者クラスの人間に近づくことは確実であろう。
【各論(個別に言及してみたい箇所)】
・地政学の基本的な用語や概念を紹介することによって、地政学の理論を応用する力が身に着くような構成になっているのではないかと思います。
・興味深いのは、国家間の位置関係、ランドパワー、シーパワーだけでなく、土地が持つ性質などに関する記述が目立つ点です。
例えば、山脈だったり、河川だったり、その土地から産出される資源や農作物に対する記述が多い印象があります。
地政学を本格的に極めるということはそういった細かなミクロ的側面も吟味する必要があると痛感させられます。
・特に好印象だったのは、欧米知識人には珍しく「台湾」の地政学的重要性に言及していた点です。
中国封じ込めには台湾が重要であると書かれている点は好印象です。
日本人で地政学の基礎を理解している人間であれば「当たり前」なことですが、欧米知識人ではピンとこない人間が多いからです。。
・欧米知識人らしくバルカン半島や中東の歴史に関する造詣も深いと見受けられます。
歴史を知らない人間は、歴史関連の記述で読むのを断念するほど詳しく書かれています。
・少々残念だったのは(奥山氏も同様の感想を持ったようだ)日本に関する表層的な記述だけで、詳細な言及がないことです。
・さらにすごいのはウクライナに関する記述である。この本は2012年に出版されたというのだから素晴らしいという一言に尽きます。
・個人的に一番意外だなと思ったのは「メキシコ」に関する記述です。
地政学なのにメキシコ?と思うのは我々が日本人であり、アジア人であるかららしいです。
東アジアの住民が南シナ海と朝鮮半島情勢に敏感になるのと同じ感覚でメキシコを語っているのは驚愕に値します。
これ以上のネタバレは避けたいと思います。
・断言しましょう。
これは買いです!絶対に!少なくとも次世代の日本を担う人材になりたければ。
ウクライナ領のクリミア半島がロシアに編入された結果
簡単に言えば、上記の地政学を学ぶと、ロシアがNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大によって、緩衝地帯(バッファーゾーン)を奪われたため、
ウクライナ内部の親ロシア派を誘導し、クリミア半島を自国の勢力下に置いた流れが理解できると思います。
大陸国家としてのロシアとしては、海へのアクセス権を確保するため、ボスポラス海峡を自由に航行したい、そのためには黒海を制する必要があり、黒海を制するためにはクリミア半島を制する必要がございました。
ウクライナがNATOに加盟するまでは、ロシアの軍事基地がクリミア半島に駐留していたのですが、ウクライナがNATOに加盟することによって、駐留できなくなるという危険がありました。
であれば、西側諸国(NATOやアメリカ合衆国)に獲られるくらいなら、いっそクリミア半島をロシアに編入してしまえとプーチン大統領は考えたのでしょう。
その結果、どういった流れになったのか、主にヨーロッパの主要国家の行動などを絡めて説明すると以下になります。
1、ロシアの行動に対して危機感を持った欧州諸国は天然ガスをロシアから買いたくないので、脱露のための行動を開始した。
2、今回のウクライナ騒乱の一連の流れがロシアからの資本流出を加速させている。
3、EUはプーチン大統領などの個人に対して渡航禁止と資産凍結を行った。経済制裁としては軽微。
4、米国内においてEUへのシェールガスを輸出して、脱露への動きを助成して、ロシアからのパイプラインの依存度を下げるように圧力を掛けている。
アメリカのトランプ大統領が署名した法律に、ロシアとドイツなどを結ぶパイプラインの建設への制裁が盛り込まれ、建設を進めていた会社が作業の中断に追い込まれました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191221/k10012223931000.html
関係がぎくしゃくするアメリカとヨーロッパ、それにロシアとの間で新たな火種になりそうです。
アメリカ合衆国のトランプ大統領はプーチン大統領を褒め称えながらも、プーチンによる欧州支配に対して、しっかりと牽制しています。
素晴らしい。
中国の脅威に対抗しない、極東の島国の国家指導者とは比べ物にならないほどの戦略的行動と言えます。
地政学とは国家行動を予測するためのツールとして、有効です。