大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年12月4日(令和元年12月4日)
自社株買いが広がる
設備投資より自社株買いに優先して資金を使う企業が増えている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52835980R01C19A2MM8000/
主要企業約300社の2019年4~9月期の支出を調べたところ、東京エレクトロンやカシオ計算機、HOYAなど22社で自社株買いの実施額が設備投資額を上回ったことがわかった。
米中貿易摩擦などの影響で投資に慎重になった企業が株主還元に資金を傾けている。
上記の日経新聞電子版の記事によりますと、設備投資よりも自社株買いを優先する企業が増えているようです。
先行き不透明なので、設備投資を見合わせた企業が株主への利益還元に積極的になっているようです。
本日は、自社株買いとは何かという基本的なところを説明しつつ、私が大学時代に勉強した金融論の講義の内容にも触れていきたいと思います。
自社株買いとは何か
そもそも自社株買いとは、民間企業が自らの資金で、自ら発行した株式を市場から買い戻す行為のことです。
民間企業は資金調達のため、株式を発行します。
例えば、1株1000円で、1万株新規発行して、すべて購入してくれれば、1000万円の資金調達が可能となります。
民間企業は投資家などに購入してもらいたいのに、自らの資金で株式を市場から買い戻すわけですから、自社株買いとは意味不明な企業行動ということになります。
この「自社株買い」という一見すると理解不能な企業行動を理解するためには、2つほどキーワードを把握しなければなりません。
それは「株主還元」と「ストックオプション」というキーワードです。
※やさしい株の始め方より
株主還元とは株価上昇によってもたらされる
私なりに、自社株買いを「株主還元」という側面から説明させていただきます。
そもそも株価というのは、市場においてその株式を欲しがる人(需要)と市場においてその株式を売りたがる人(供給)のバランスで決まります。
例えば、1株1000円の価値がある株式において、需要と供給を比べた場合、需要が大きいのであれば、価格は上昇しますし、供給が大きいのであれば価格は下落します。
物やサービスが需要と供給によって決定されるのとほぼ同じ原理です。
ここで考えていただきたいのは、自社株買いとは、株式発行元による株式購入ですから、需要が大きくなります。
したがって、株式における需要と供給のバランスが変化して、需要が供給と比べて大きくなる可能性が高く、株価が上昇または爆上げする可能性がございます。
勘のいい方はお気づきになられたのではないでしょうか。
自社株買いという企業行動により、株価が上昇する可能性が高まり、既存株主の株式保有に伴う含み益が増える(または含み損の解消)可能性が高まるのです。
仮に株価が上昇するということになると、株主の利益になりますので、株主への利益還元ということになります。
※本当はもっと複雑な理論によって株価上昇なのですが、ご理解が難しいと思い、省略させていただきました。
ストックオプションとは何か
さて、もう一つのキーワードである「ストックオプション」についても説明したいと思います。
ストックオプションとは、企業があらかじめ決めた価格で、その企業の役員や従業員などに自社株が買える権利を付与することです。
https://kabukiso.com/column/jisha.html
上記の引用元で詳細に説明されていますが、私なりに、もっと簡潔でわかりやすく説明したいと思います。
民間企業が発行した株式をなぜ市場から買い戻すのかと申しますと、従業員や会社役員への報酬として「ストックオプション」付与するに際して、現物株を保有しないといけないからです。
従業員や役員への報酬として、自社の株式を購入できる権利を付与するためには、会社がその付与する分の株式を保有しなければなりません。
※考えてみたら当たり前の話ですよね('ω')
仮に1株1000円の株式を100株購入できるストックオプションをAさんが保有していた場合に、株価が2000円になったらどうなるでしょうか。
10万円で100株購入した後すぐにすべての株式を売却すれば、20万円(2000円×100)になるので、10万円の売却益を得ることができます。
したがって、株価が上がれば株価が上がるほど、ストックオプションの効用が高まるということになります。
実は、ストックオプションに関しては、大学時代に金融論の講義で詳細に勉強したことがございましたので、大変感慨深いものがございました。
※学校の勉強が役に立つことを実感できるのがブロガーの醍醐味です。
実体経済において自社株買いは好ましくない
さて、基本的なところを説明したところで、この記事で言いたいことをまとめたいと思います。
簡潔に言えば、実体経済において自社株買いは好ましくありません。
なぜならば、民間企業が供給能力を強化することよりも、自社の株主へ利益を還元することを優先した行動だからです。
実体経済においては、設備投資や雇用創出により、長期的な売り上げを増やし、その利益の一部を株主に還元するというのが正しい在り方であり、一番公平な利益分配であると考えます。
ただ、自社株買いというのは、第一に株式を保有している投資家や組織の利益を最大化する行動であり、第二に報酬としての株式を確保するという動機があっての行動です。
結局のところ、株主(ストックオプションを行使してすぐ売却したとしても)資本主義の最たるものと言えます。
さらに言えば、短期的な株価上昇のために、長期的な供給能力の強化や研究開発などを犠牲にして、お金を株式購入に費やすため、何らかの規制が必要なのではないかと考えています。
少なくともストックオプションは禁止して、自社株買いも敵対的な買収防衛のためならば認めるが、そうでない場合は数量制限(年間で購入できるのは既存発行株式の5%までにするなど)が必要だと思います。