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『戦争論』クラウゼヴィッツ語録を読む。クラウゼヴィッツ忌避を打破

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反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2022年8月27日(令和4年8月27日)

本日は加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録の内容を簡単にご紹介できればと思います。

クラウゼヴィッツの『戦争論』は読めていない古典の代表格

さて、加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録に関する基本的なご紹介に入る前に、私なりのクラウゼヴィッツ観を表明しておきたいと思います。

そもそも『戦争論』という著書を途中まで書き残したのがカール・フォン・クラウゼヴィッツというプロイセンの軍人です。

ナポレオンが欧州を席巻していた時代に生きていた人間であり、宿敵フランスを打倒するために『戦争論』を残した側面がございます。

『戦争論』とは、ランドパワーの激突という局所的な戦争を論じている書籍であると解釈しておりました。

また、あまりにも難解なため日本人にとっては必読文献ではないと思っていました。

さらに言えば、クラウゼヴィッツの『戦争論』は読まなくてもいい古典の代表格と認識しておりました。

それでも『孫子とクラウゼヴィッツ』や兵頭二十八著『[新訳]戦争論』などを読みつつ『戦争論』のエッセンスは理解しようと努めておりました。

今回、『戦争論』クラウゼヴィッツ語録を読ませていただき『戦争論』に関する理解がさらに深まったと喜んでおります。

戦争という国家最大の悲劇であり、祖国防衛の責務から目を背けるわけにはいきませんから『戦争論』は読むべきだと現在では認識を改めました。

クラウゼヴィッツの『戦争論』の第1版と第2版の違いについて

クラウゼヴィッツの『戦争論』の何がそんなに読みにくいかと申しますと、第1版と第2版が存在しており、どちらを重視するべきなのかというのがわかりにくいからです。

結論から言えば、ドイツ語原典から日本語訳にしており、第1版を翻訳した清水多吉訳『戦争論』(中公文庫)を重視するべきと言えます。

『戦争論』とは完成する前にクラウゼヴィッツがお亡くなりになってしまい、未完の状態のまま、マリー夫人の手で刊行されたという経緯がございます。

その後、マリー夫人の弟である「ブリュール伯爵」が修正を加えて第2版を刊行されました。

ただ、その第2版が「改竄」されたのではないかと指摘されるような修正が行われているため、現在では第1版の文章の方が正しいという見方が有力なのだそうです。

率直に申し上げて、私のような素人からしますと、第1版を読めばいいのか第2版を読めばいいのかわかりませんよ。

さらに言えば、第1版と第2版の違いすらわからないような方もいらっしゃると思いますし、そうなると日本人にとっての『戦争論』忌避感は高まってしまいます。

入門書としては加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録を読んでいただいてから、他のクラウゼヴィッツ関連本を読むべきかと存じます。

私としても、清水多吉訳『戦争論』(中公文庫)は精読していきたいですね。

奇抜な内容というより常識的な考えが満載なのでは?

さて、加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録から一部抜粋する形で『戦争論』のエッセンスを学んでいただければと存じます。

戦争での物理的な力は手段であり、相手に自分の意志を強要することが目的なのである。
この目的を確実に達成するには、敵の抵抗力を無力なものにしなければならない。

引用元:加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録p38より

『戦争論』においては当然のことながら、戦争とは何かという説明がなされます。

「戦争とは、異なる手段を以て継続される政治に他ならない」という有名な定義がございます。

ただ、一方で上記引用元のように、戦争とは政治的目的を達成するための手段であり、相手に自分の意志を強要する手段と言及しているということは有名ではありません。

あまりにも残酷な真実だから日本人好みではないことが原因なのではないかと推察します。

国家間で外交交渉が行われたとしても合意できない場合がございます。

戦争とは、外交交渉の代替案であり、国家の暴力性を解放して、相手が呑めないような条件を無理やり呑ませるために行われる国家事業なのです。

私としては極めて真っ当な内容と申しますか、クラウゼヴィッツの戦争理解は奇抜なものではなく常識的なものだったのではないかと。

摩擦があるから軍事力の効率的投射は難しいのである

本書で[戦場の危険]、肉体的労苦、[錯綜する]情報、[狭義の]摩擦などと呼んできたものは、戦争という環境に存在し、活動のすべてを阻害する要素である。
(中略)
この摩擦抵抗を緩和する潤滑油はないものか?ーーただ一つある。
・・・・それは軍隊が戦争遂行に慣れ、巧みになること、つまり習熟である。

引用元:加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録p185より

クラウゼヴィッツは摩擦という概念を提唱しております。

戦場での敵からの攻撃、肉体的労苦や精神的疲労、極限状態での情報の錯綜などが摩擦であり、それが軍事力の効率的投射を難しくしております。

進撃、退却、攻撃、防御、迂回、陽動などといった軍隊の行動を阻害してしまいます。

その摩擦を全部無くすまたは克服するということは無理だと思います。

しかしながら、緩和することは可能であり、緩和するためにはどうすればいいのかと申しますと、軍隊が戦争遂行に習熟すればいいのです。

現代においては国家間戦争が易々と発生するわけではありませんので(ロシア周辺国は別)軍事演習などで、摩擦の緩和に努めなければなりませんね。

不確実性がたっぷりと含まれた軍事演習を行い、とある部隊が全滅することまでも想定した軍事演習が必要です。

戦場の霧があるから脅威から目を背けるべきではない

戦争においてはすべての行動がかなり不確実であるということも、独特の難しさの一つである。
[《戦場の霧》といわれるものだが]すべての行動を、かなり輪郭のかすんだ薄明りの中で行わなければならない。
それはちょうど、霧の中や月明りのなかでモノをみるようなものである。

引用元:加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録p186より

自国の軍隊の行動や敵国の軍隊の行動だけでなく、第三国の軍隊の行動もすべて考慮して軍事作戦や軍事戦略を策定しなければなりません。

当然のことながら、戦争という極限状態においてはどの動きは予測しにくく、そして正確に認識することすら難しいと言えます。

いわゆる《戦場の霧》という不確実性の問題に激突することが常なのが戦争なのです。

現場指揮官や軍上層部はいつ、何が、どのように行動し、結果どうなるのかを可能な限り正しく把握して決断しなければなりません。

その決断を実施するためには、不断の努力と不確実性を可能な限り低減する技術が必要なのです。

もしかしたら『戦争論』は《戦場の霧》を晴らすための書籍なのではと思ったりもします。

クラウゼヴィッツの『戦争論』を学ぶことは戦争理解の第一歩

最後になりますが、私個人としては加藤秀治郎編訳『戦争論』クラウゼヴィッツ語録を読むことで『戦争論』を読む気力が湧き出てきました。

現在進行中のロシアのウクライナ侵攻においても参考になる箇所もございましたので、全訳を読みたいですね。

以上です。

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