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反逆する武士

現代貨幣理論

アメリカの市場関係者はドライに現代貨幣理論を理解して批判している

投稿日:

現代貨幣理論の基礎
uematu tubasa著『現代貨幣理論の基礎

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2022年1月16日(令和4年1月16日)

財源確保のために予算の付け替えは誤った考えである

現代貨幣理論(MMT)の支持者にとって、民主・共和両党が5500億ドルの新規支出全額についてそれに見合う歳入で相殺(「payfors」として知られる措置)すべきだと主張したことは、貨幣は政府の手段にすぎないという考え方に反する。
(中略)
今のように需給が引き締まった経済では、MMT派は、新規支出を相殺したいと考える可能性がある。
だが、他の分野の支出削減や増税はインフレを避けるためのものであり、財政を均衡させることが目的ではない。

引用元:現代貨幣理論、今そこにある現実

ジェームズ・マッキントッシュ(WSJ市場担当シニアコラムニスト)は上記引用元記事において、現代貨幣理論をかなりドライに評価しているようでして、かなり踏み込んだ記事になっております。

現代貨幣理論において、税は財源ではなく、税収が無くても政府支出は可能です。
したがって、新規政府支出のお金を賄うために歳入(この場合は税収と言い換えても可)で相殺するべきという主張は現代貨幣理論とは相容れないのです。

仮に、インフレをこれ以上悪化させるべきではないので、税収と相殺するというなら理解できますが、財政均衡を目的とする税収相殺や基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目的とする税収相殺には反対することになります。

つまり、デフレや金融危機により需要喪失が発生しそうな局面においては、税収相殺ではなく貨幣発行による政府支出を行うべきなのです。

ジェームズ・マッキントッシュは現代貨幣理論を完全ではないとは言え、理解しているようです。

就業保証プログラムは採用されていないがそれは正解だろう

MMTの主要な主張は採用されていない。
政府に対する雇用保証導入の提言もその一つだ。
だが、中銀がインフレを制御するために失業者数を調整している現状に対するMMTの批判は、痛いところを突いている。

引用元:現代貨幣理論、今そこにある現実

現代貨幣理論の唯一の政策提言である雇用保証導入(就業保証プログラムの導入)はアメリカ連邦政府には採用されておりません。

中央銀行や中央政府がインフレ抑制のために金融引き締めや政府支出抑制を実施して、景気に冷水を浴びせて、立場の弱い人々の雇用を喪失させることで、お金を使いにくい状態にさせてきました。

就業保証プログラムは「経済のために弱い立場の人々が犠牲になるシステム」に対する根本治療として機能する可能性がございます。

ジェームズ・マッキントッシュは現代貨幣理論よる現状批判を「痛いところを突いている」と論評しているので、現実を理解しているようです。

現代貨幣理論の思想として、フローやストック、現実を正しく理解しようというのが根底にございますから、ジェームズ・マッキントッシュにとっては親和性が高いのではないかと推察します。

ただ、現代貨幣理論を支持しているけれども、唯一の政策提言としての就業保証プログラムに対して懐疑的であると公言している私としては、アメリカ連邦政府が就業保証プログラムを採用しなくて本当に安堵しております。

どう考えても制度的に問題を抱えているので、社会的な混乱が発生するかもしれず、それに伴い現代貨幣理論すら疑いの目を向けられてしまっては、迷惑極まりないです。

就業保証プログラムの詳細や就業保証プログラムに対してなぜ懐疑的にならざるを得ないのかに関しては、以下の参考記事を見ていただきたく。

※参考記事:就業保証プログラムの実現可能性について懐疑的な現代貨幣理論理解者
※参考記事:就業保証プログラムのデメリットと制度設計を考えると厳しい意見あり

マネタリストを激怒させることが現代貨幣理論支持者の使命なのだ

FRBはインフレを(当然ながら)懸念し、政策手段に微調整を加え、金融政策を通じて経済に影響を与えようとしている。
これはまさにMMT支持派が機能しないと考えていることだ。
レイ氏が指摘したように、インフレが上昇したのは、数兆ドルの給付金が銀行口座に振り込まれた時ではない。
受給者がそれを使った時だ。
レイ氏は「貨幣はインフレを引き起こさない。支出がインフレを引き起こすのだ」と主張し、マネタリストの怒りを買っている。

引用元:現代貨幣理論、今そこにある現実

さて、上記引用部分に関して分析する前に、軽く用語説明だけさせていただきたいと思います。

上記引用元に出てくるレイ氏というのは、現代貨幣理論の提唱者であるLarry Randall Wrayのことです。

マネタリストとは、マクロ経済の変動において貨幣供給(マネーサプライ)を行う中央銀行の役割などを重視する経済学の一派およびその主張をする経済学者のことです。
※詳細に関してはマネタリスト関連の記事や書籍を参照のこと。

拙ブログにお越しの皆様にとってわかりやすく説明するのであれば、いわゆるリフレ派のようなものです。
景気悪化の場合は、中央銀行が政策金利を引き下げ、量的緩和を行い、景気過熱時においては中央銀行が政策金利を引き上げ、量的縮小を行えば、国民経済を良好に運営できると考える一派なのです。

現代貨幣理論を学んだ人間としては、マネタリストは机上の空論を振りかざして威張り散らす老害としか思えません。

日本銀行が政策金利を引き下げたとしても、民間企業や家計に資金需要が無かったらお金を借りませんので、現実世界においてお金が動くことはありません。

日本銀行が量的緩和を実施したとしても、民間金融機関のバランスシート上の組み換えが行われるだけです。
バランスシート上の債券(主に国債)という資産が日銀当座預金という資産に代わるだけであり、民間企業や家計に対する貸付業務が活性化するわけではありません。

なぜならば、民間金融機関(主に銀行)は民間企業や家計の口座に数字を打ち込んで貸付業務を行えるので、日銀当座預金という制約がほぼ無く、仮にあったとしてもコール市場レポ市場などで日銀当座預金を調達できるからです。

さて本題に戻りますと、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ対策に本腰を入れるため、政策金利の引き上げと量的緩和の段階的縮小に踏み切る公算が大ですが、インフレ対策になるとは思えません。

口座のお金が増減したところでインフレが発生するわけではありません。
実際に支出されたときにインフレが発生するのです。

政策金利が引き上げられて、物やサービスを販売している民間企業が値下げに踏み切るのでしょうか。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が債券を購入しなくなったからといって、民間企業の供給力が向上するのでしょうか。

金融引き締め姿勢を悲観的に考えた大手ヘッジファンドが、穀物や原油などのいわゆるコモディティ市場から資金を引き上げる可能性はゼロではありませんが、そんな不確実性の高いことをインフレ対策として掲げるべきではありません。

インフレ対策としては、法人税や所得税の累進課税強化を実施することで、ビルトインスタビライザーの改善を行いつつ、設備投資を促すことで、長期的な供給能力の強化で需要と供給の均衡を保つように誘導するべきです。

マネタリストを激怒させるのが現代貨幣理論支持者の役割であり、使命だと思います。
経済学の信頼回復につながるでしょう。

インフレ対策という点ではステファニー・ケルトン教授が正しい

MMT支持派は総じて、ジョー・バイデン大統領の歳出計画がどのみちインフレを引き起こすとは懸念していない。
それでもMMTは、需要の抑制に増税が必要なら、超富裕層ではなくそれ以外の人々を標的にすべきだとしている。
レイ氏は「経済全体、とりわけ消費性向が98%に達する大多数の米国民の需要を減らす広範な税を設けることは、より理にかなう」と述べた。

引用元:現代貨幣理論、今そこにある現実

ジェームズ・マッキントッシュはMMTを一つの理論としてではなく、1つの学派のように捉えている節がございますが、それは誤りだと思います。

私のように現代貨幣理論を支持していても、就業保証プログラムに懐疑的で、ユニバーサル・ベーシックインカムに賛同している人間もおりますし、上記引用元における超富裕層ではない人々を増税のターゲットにするべきという考えにも懐疑的です。

仮に、アメリカ経済において、インフレの原因がアメリカ人の消費意欲が強すぎて需要増大型物価上昇(ディマンドプル・インフレ)であり、すでに超富裕層の多額の納税があった場合は、大多数のアメリカ人の需要を抑制する税金は必要です。

ただ、現状は費用増大型物価上昇(コストプッシュ・インフレ)と供給低下型物価上昇(サプライダウン・インフレ)と需要増大型物価上昇(ディマンドプル・インフレ)の混合となっており、超富裕層の多額の納税があったわけではありません。

さすがに超格差社会のアメリカにおいては、まずは超富裕層をターゲットとした増税を行うべきでしょうし、少なくとも費用増大型物価上昇と供給低下型物価上昇を退治してから、一般的なアメリカ人に対する広範な増税に関する議論を開始するべきです。

インフレに対してどのように対処するべきなのかという点に関しては、レイよりもステファニー・ケルトン教授(現代貨幣理論の提唱者)の方が正しいように思えます。
※参考記事:インフレ要因を分析して適切に対処する。増税と歳出削減は最後の手段

要するに、インフレの原因を正しく認識して、正しい対策を講じるべきということです。
レイはその点だけで言えば、かなり粗雑なことを主張しているようです。

以上です。

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