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反逆する武士

現代貨幣理論

就業保証プログラムの実現可能性について懐疑的な現代貨幣理論理解者

投稿日:

現代貨幣理論の基礎
uematu tubasa著『現代貨幣理論の基礎

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2021年7月3日(令和3年7月3日)

※今月から週一ペースでの更新となりますので、何卒宜しくお願い致します。
※精神状態が良い場合は不定期更新になるかもしれません。

就業保証プログラムへの懐疑

経済クラスタ、反緊縮クラスタ、積極財政クラスタと呼ばれる方々が支持している割合が多い現代貨幣理論なのでございますが、就業保証プログラム(JGP)に関する考え方は異なっている場合が多いです。

現代貨幣理論から導ける唯一の政策提言なのでございますが、様々な意見があり、批判的な意見もございます。

現代貨幣理論(MMT)を80%支持している私ですら、就業保証プログラムに対して懐疑的な見方をしております。
誤解無きように申し上げると、肯定的でも否定的でもなく、実現可能性に疑問を持っているという就業保証プログラム懐疑派とも言うべきスタンスなのです。

本日は、現代貨幣理論から導ける政策提言である就業保証プログラム(JGP)をご紹介しつつ、私なりに徹底的に批評していければと考えております。

就業保証プログラムとは何か

内藤敦之著『内生的貨幣供給理論の再構築』を参考文献とし、一部引用しつつ、説明させていただきます。

いわゆる「最後の雇用者」政策論は、有効需要論に基づく非常に積極的な財政政策の一環として、主張されている。
これは、雇用政策の一種であり、公共支出による財政政策ではなく、公共部門が失業者を雇用するというものであり、ほぼ同時にWray(1998)の「最後の雇用者(Employer of Last Report,ELR)」政策およびMitchell and Watts(2002)の「雇用保障(Job Guarantee,JG)」政策といった名称で提唱されている。

引用元文献:内藤敦之『内生的貨幣供給理論の再構築』pp282より

この就業保証プログラムを我が国日本に適用するとなれば、日本政府(もしくは地方自治体)が働きたい人は誰でも雇う旨を宣言し、誰でも雇う際の賃金も公表し、最後の雇い手としての役割を果たすことになります。

雇い入れる際に、日本政府もしくは地方自治体が提示する賃金が実質的に最低賃金として機能します。
最低賃金を全国一律にして、さらに政治の力で引き上げることが可能になります。

不況期もしくは恐慌期において、失業者が増えた場合に雇用を維持することができ、好況期もしくは景気過熱期においては、政府及び地方自治体から民間企業へ労働力が移動します。

ある意味でのセーフティネット(安全網)として機能する非裁量的な財政政策と言えます。

これにはメリットがあり、金融危機や何らかの経済的なショックに伴う失業が発生したとしても、公的部門における雇用の創出によって、所得減少を最小限に抑制することができます。

失業手当や社会保障給付を最小限にすることができます。
失業に伴う、社会的費用を削減することができます。

失業に伴う社会的費用とは、人的資本の劣化(長期失業が招く労働力の腐食)、家族の崩壊、犯罪の増加、自殺の増加、医療費の増加などが含まれます。

この就業保証プログラムは強制ではなく、任意であり、労働する能力と意志のある者が最後の雇い手の対象になります。

したがって、非自発的失業を解消することができますが、自発的失業を予防することはできません。

なぜこのような政策が現代貨幣理論において論じられているかと申しますと、ヨーロッパやオーストラリアなどで高い失業率が継続していたからなのだそうです。

失業という問題が恒常的に発生する経済を分析するに当たり、就業を保証するような計画案が立案されたのではないかと推察します。

仕事内容に関しては、現時点で地方自治体や日本政府が担っている業務を失業者にも行ってもらうというワークシェアリングではなく、就業保証プログラムのために計画された非営利事業を行います。

これは営利企業との競合を避け、民需圧迫にならないようにとの配慮が必要だからです。

完全雇用を達成するために、財政的予算制約が無い日本政府がプロジェクトを立ち上げて、無制限に雇用することで、社会全体の安定化を図るという一連の仕組みが就業保証プログラムなのです。

完全失業者をできるだけ少なくすることで、供給能力を毀損せず、不況下における所得の減少を最小限にすることが可能なので、ビルトイン・スタビライザーとして機能します。

※過去記事:就業保証プログラムのサボタージュ対策はプログラム参加拒否が一番か

同一労働同一賃金に違反するのではないか

就業保証プログラムに関しては前述した通り、懐疑派です。

なぜかと申しますと、実現可能性が乏しいという点と、本質的な批判があります。
それは同一労働同一賃金に違反する可能性があるという点です。

就業保証プログラムはその制度上、統一賃金が定められます。
仮に時給1500円だとします。

例えば、とあるITエンジニアが公的部門のシステムメンテナンスを行った場合は時給1500円で、公園の掃除を行っても時給1500円だったとしたら、さすがに不公平感が大きくなり、同一労働同一賃金に違反します。

就業保証プログラムはその制度上、様々な仕事や様々なプロジェクトを公的部門(主に中央政府)が容易することになりますが、様々な種類の仕事を用意すれば容易するほど、同一労働同一賃金に違反してしまうという矛盾を抱えています。

現実の経済において同一労働同一賃金を厳密に実現しようとすると様々な軋轢が生まれるでしょうが、公共部門が生み出す雇用において、明らかに同一労働同一賃金に違反するようなことを実現するのは問題なのではないかと。

無意味な仕事が生み出される可能性あり

さらに付言するならば、これは公共投資や政府支出を増やす場合にも留意しなければならないことですが、穴を掘って埋めるという無意味な仕事を生み出すことになり、本質的に意味のない仕事に失業者の人生が費やされるということになるかもしれません。

いわゆる人的資源の無駄になるかもしれないという可能性があるということです。

したがって、就業保証プログラムに関してはその仕事内容に関しても吟味する必要がございます。

現代貨幣理論を支持する「パブリナ・チャーネバ」は以下のような仕事の内容を提唱しております。

環境のためのケア:都市の植樹、治水、環境調査、種のモニタリング、植樹、公園の維持管理、外来植物の除去、地元の漁業の構築など。

コミュニティのためのケア:空き地の清掃、資材の再生、修復やその他の小規模なインフラプロジェクト、学校の庭園、都市部の農場、コワーキングスペース、太陽光発電所、工具ライブラリ、遊び場の建設、歴史的名所の修復、コミュニティ劇場の組織化、食品廃棄物プログラム、オーラルヒストリープロジェクトなど。

人々のためのケア:高齢者介護の提供、放課後活動、車椅子を利用した食事場所、危機に瀕した子供や若者、元受刑者、障害者のための特別プログラムなど。

その他の仕事例:学校での栄養調査、若い母親のための健康意識向上プログラム、学校や地元の図書館での成人向けスキルクラス、延長保育プログラムの実施、教師、コーチ、ホスピスワーカー、司書のシャドウイングなど。

※参考記事:Job Guarantee Program:JGP (就業保証プログラム) について

公共部門が正規雇用するべきなのでは

はっきり申し上げて、地球環境や動植物に対する保護活動というのは、専門職であり、失業者に担わせるような簡単な仕事ではございません。

介護サービスの提供、教師や何らかの教育関連プログラム(心理療法士などが行う)に関しても資格保有者であっても逃げ出すような過酷な仕事でございます。

事業の継続性と需要が継続的に増える分野に関しては、労働供給が景気変動によって増減する就業保証プログラムに任せるべきではなく、公共部門(中央政府や地方自治体)が継続的に専門的知見を持つ人や資格保有者を雇うことで生産性を高めるべきです。

変動相場制を採用し、自国通貨を保有する政府に財政的予算制約はありませんから、地方自治体が雇う場合であってもその費用を中央政府が肩代わりしてでも、雇用を創出するべきなのではないでしょうか。

要するに、就業保証プログラムという景気の調整弁には任せられない仕事も仕事内容に含めてしまっている点で問題なのではないでしょうか。

島倉原の就業保証プログラム批判

私とは微妙に考えが違うでしょうが、島倉も就業保証プログラムについてその有効性を認めながらも実現するには課題があると認めているようです。

まず、 就業保証プログラムはあくまでも最低賃金水準での雇用を提供するものであって、 一定 のスキルによってある程度高い収入を得ている人々の失業 問題を解決するものではありません。

引用元:島倉 原. MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) (Kindle の位置No.2035-2036). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

つまり、就業保証プログラムは低所得者もしくは失業者に対して有効な「最後の雇い手」政策であり、高所得者の失業問題を解決するものではないということです。

誤解を恐れずに言及するならば、日雇い派遣で苦しむ労働者には福音でも、ヘッジファンドマネージャーがリストラされた場合、ヘッジファンドに再就職できるか否かを政府が保証する制度ではありません。

就業保証プログラムへの参加者の数が景気変動によって増減すれば、同プログラムを通じた公共サービスが、安定的に供給できなくなる事態も生じ得ます。

引用元:島倉 原. MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) (Kindle の位置No.2040-2042). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

この点に関しては私も全く同意見です。

例えば、国土強靭化のための土木作業員を募集していた場合、景気が上向きになって、他の民間企業へ就職することになった場合はどうなるでしょうか。

国土強靭化を実施できなければ、自然災害によって人が死んでしまう危険極まりない日本列島のままです。

国民生活に必要な非営利事業を就業保証プログラムで行っていた場合、途中でプログラムが実行不可能になってしまったら、混乱が発生してしまいます。

こども食堂などの貧困対策事業であれば、就業保証プログラムで貧困が緩和されれば、こども食堂にやってくる子供も少ないでしょうから、ある程度はプログラム中止の影響が緩和されるかと思います。

したがって、就業保証プログラムの仕事内容は不景気において需要が高まり、好景気においては需要が低下するサービスが望ましいと言えるでしょう。

最低賃金水準での仕事に限っても、その分野や職種はある程度多様なものであり、それぞれの仕事で必要とされる人数が、就業希望者のニーズとは大きく乖離することもあり得るでしょう。

引用元:島倉 原. MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) (Kindle の位置No.2045-2047). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

この点に関しても私は同意見です。

失業者のスキルには様々な種類がございますし、どれほど習熟しているのかも千差万別です。

失業者や低所得者の希望に沿う形の就業保証プログラムが見つかるかというと、絶対に一致するとは言い切れません。

そうなると失業者としては、就業保証プログラムに参加したくても参加できない、もしくは参加意欲を失うということにもなり、セーフティネットの意味が薄れてしまいます。

サボタージュする人間をどうするのか

就業保証プログラムの実効性に関して言及しなければならない点がございます。

例えば、子供食堂で調理担当の仕事をしている人間が、サボタージュしたら、解雇できるのでしょうか。

解雇しなかったら、サービスの質が保てないので、利用する人間が少なくなり、子供食堂が成り立たない可能性があります。

民間企業の生産活動の質やモラルが比較的守られているのはなぜかというと、サボる、商売倫理に違反、法令違反などをやってしまうと解雇されたり、倒産するというペナルティが存在するからだと思っています。

少々古い言い方になるかと思いますが、信賞必罰がやりにくいというのが、就業保証プログラムの弱点なのではないかと。

法令違反などは刑事罰などの対象となりますので、警察と司法当局にお任せすることにして、単にサボタージュや規則違反ということになった場合は、注意勧告、一定期間の就業保証プログラムからの強制離脱、永久的に就業保証プログラムに参加不可処分などが考えられます。

モラルハザードを防ぐためにはやむを得ないでしょうし、ある意味当然だとは思いますが、就業保証プログラムの理念である非自発的失業の撲滅、つまりは完全雇用からは遠のくのではないかと。

児童労働につながるかもしれない

就業保証プログラムに関する本質的な批判としては、児童労働につながる恐れもございます。

例えば、子供食堂を運営するという就業保証プログラムがとある地方自治体で立ち上がったとします。

その地方自治体の就業保証プログラムに参加したいと小学生が応募してきた場合はどうなるのでしょうか。
労働法規的には駄目ですけれども、就業保証プログラムは就業を望む人間には仕事を与えることが本来の責務のはずです。

児童労働を拒否することが、就業保証プログラムの本来の意味を失わせてしまうのです。

現実問題としては、労働を希望する小学生には何らかの理由(親が相対的貧困もしくは失業者)があると思いますので、既存の社会保障制度を拡充して救うべきでしょう。

就業保証プログラムはキャリアとして認識されるか

就業保証プログラムの問題は他にもございます。

好景気になり、民間企業の労働需要が高まり、就業保証プログラムに参加していた方々から、統一賃金よりも高い賃金水準と福利厚生を提示して従業員を雇う場合、果たして就業保証プログラムでの就業経験を「キャリア」として認識してくれるのでしょうか。

民間企業の採用担当者は、書類審査や面接などでその人が今後自社の役に立つ人材なのかどうかを見極めることになります。

その際に、就業保証プログラムに従事した経験を肯定的に評価するとは限らないという本質的な問題が生じてしまい、就業保証プログラムに参加した年月が長ければ長いほど民間企業での業務に復帰できないかもしれないという可能性もあります。

要するに、就業保証プログラムという自社の業務と無関係なことをしていただけで、経験値が足りないという判断となり、採用に至らないということになりかねません。

となると、就業保証プログラムから人的資源を確保することができず、民間企業の供給能力が伸び悩むということになり、最終的にはインフレが加速する可能性もございます。

就業保証プログラムが民間企業から評価されなかった負け犬の集団として認識されるという悲劇につながるかもしれず、仕事はあるのに就業保証プログラムには参加したくないという失業者が増えるかもしれません。

以上です。

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