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反逆する武士

現代貨幣理論

就業保証プログラムのデメリットと制度設計を考えると厳しい意見あり

投稿日:

現代貨幣理論の基礎
uematu tubasa著『現代貨幣理論の基礎

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2020年12月25日(令和2年12月25日)

就業保証プログラムとは何か

現代貨幣理論における「最後の雇い手」もしくは就業保障プログラム(Job Guarantee Program)をご紹介したいと思います。

「最後の雇い手」について、内藤敦之著『内生的貨幣供給理論の再構築』を参考文献とし、一部引用しつつ、説明させていただきます。

いわゆる「最後の雇用者」政策論は、有効需要論に基づく非常に積極的な財政政策の一環として、主張されている。
これは、雇用政策の一種であり、公共支出による財政政策ではなく、公共部門が失業者を雇用するというものであり、ほぼ同時にWray(1998)の「最後の雇用者(Employer of Last Report,ELR)」政策およびMitchell and Watts(2002)の「雇用保障(Job Guarantee,JG)」政策といった名称で提唱されている。

引用元文献:内藤敦之『内生的貨幣供給理論の再構築』pp282より

この「最後の雇い手」を我が国日本に適用するとなれば、日本政府もしくは地方自治体が働きたい人は誰でも雇う旨を宣言し、誰でも雇う際の賃金も公表し、最後の雇い手としての役割を果たすことになると思います。

雇い入れる際に、日本政府もしくは地方自治体が提示する賃金が実質的に最低賃金として機能します。

最低賃金を全国一律にして、さらに政治の力で引き上げることが可能になります。

不況期もしくは恐慌期において、失業者が増えた場合に雇用を維持することができ、好況期もしくは景気過熱期においては、政府及び地方自治体から民間企業へ労働力が移動します。

ある意味でのセーフティネット(安全網)として機能します。

これにはメリットがあり、失業による所得減少を最小限に抑制することができます。

失業手当や社会保障給付を最小限にすることができます。
失業に伴う、社会的費用を削減することができます。

失業に伴う社会的費用とは、人的資本の劣化(長期失業が招く労働力の腐食)、家族の崩壊、犯罪の増加、自殺の増加、医療費の増加などが含まれます。

この「最後の雇い手」は強制ではなく、任意であり、労働する能力と意志のある者が最後の雇い手の対象になります。

また、公的機関に雇用された労働者は解雇される可能性があり、すべての雇用問題を解決するような代物ではございません。

なぜこのような政策がMMT(現代貨幣理論)において論じられているかと申しますと、ヨーロッパやオーストラリアなどで高い失業率が継続していたからだそうです。

失業という問題が恒常的に発生する経済を分析するに当たり、就業を保障するような計画案が立案されたのではないかと推察します。

仕事内容に関しては、現時点で地方自治体や日本政府が担っている業務を失業者にも行ってもらうというワークシェアリングではなく、就業保証プログラムのために計画された非営利事業を行います。

労働者プールが小さくなっても継続されなければならないプロジェクトもある。
例えば、高齢者に温かいランチを宅配する「 ミールズ・オン・ホイールズ(meals on wheels)」プロジェクトである。

L・ランダル・レイ. MMT現代貨幣理論入門 (Kindle の位置No.6109). 東洋経済新報社. Kindle 版.

高齢者への食事宅配事業となると、民業圧迫ということにはならないでしょう。
我が国日本で似たようなことをするのであれば、こども食堂ということになるでしょうか。

就業保証プログラムには課題がある

私とは微妙に考えが違うでしょうが、島倉も就業保証プログラムについてその有効性を認めながらも実現するには課題があると認めているようです。

まず、 就業保証プログラムはあくまでも最低賃金水準での雇用を提供するものであって、 一定 のスキルによってある程度高い収入を得ている人々の失業 問題を解決するものではありません。

引用元:島倉 原. MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) (Kindle の位置No.2035-2036). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

つまり、就業保証プログラムは低所得者もしくは失業者に対して有効な「最後の雇い手」政策であり、高所得者の失業問題を解決するものではないということです。

誤解を恐れずに言及するならば、日雇い派遣で苦しむ労働者には福音でも、ヘッジファンドマネージャーがリストラされた場合、ヘッジファンドに再就職できるか否かを政府が保証する制度ではありません。

就業保証プログラムへの参加者の数が景気変動によって増減すれば、同プログラムを通じた公共サービスが、安定的に供給できなくなる事態も生じ得ます。

引用元:島倉 原. MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) (Kindle の位置No.2040-2042). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

この点に関しては私も全く同意見です。

例えば、国土強靭化のための土木作業員を募集していた場合、景気が上向きになって、他の民間企業へ就職することになった場合はどうなるでしょうか。

国土強靭化を実施できなければ、自然災害によって人が死んでしまう危険極まりない日本列島のままです。

国民生活に必要な非営利事業を就業保証プログラムで行っていた場合、途中でプログラムが実行不可能になってしまったら、混乱が発生してしまいます。

こども食堂などの貧困対策事業であれば、就業保証プログラムで貧困が緩和されれば、こども食堂にやってくる子供も少ないでしょうから、ある程度はプログラム中止の影響が緩和されるかと思います。

最低賃金水準での仕事に限っても、その分野や職種はある程度多様なものであり、それぞれの仕事で必要とされる人数が、就業希望者のニーズとは大きく乖離することもあり得るでしょう。

引用元:島倉 原. MMT〈現代貨幣理論〉とは何か 日本を救う反緊縮理論 (角川新書) (Kindle の位置No.2045-2047). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

この点に関しても私は同意見です。

失業者のスキルには様々な種類がございますし、どれほど習熟しているのかも千差万別です。

失業者や低所得者の希望に沿う形の就業保証プログラムが見つかるかというと、絶対に一致するとは言い切れません。

そうなると失業者としては、就業保証プログラムに参加したくても参加できない、もしくは参加意欲を失うということにもなり、セーフティネットの意味が薄れてしまいます。

サボタージュする人間をどうするのか

就業保証プログラムへの批判で気付かなかったことがあります。

例えば、子供食堂で調理担当の仕事をしている人間が、サボタージュしたら、解雇できるのでしょうか。

解雇しなかったら、サービスの質が保てないので、利用する人間が少なくなり、子供食堂が成り立たない可能性があります。

配置転換は罰則として考えられますし、確かに抑止にはなり得るでしょうが、それだと抑止としてあまりにも弱いのではないかと思います。

民間企業の生産活動の質やモラルが比較的守られているのはなぜかというと、サボる、商売倫理に違反、法令違反などをやってしまうと解雇されたり、倒産するというペナルティが存在するからだと思っています。

少々古い言い方になるかと思いますが、信賞必罰がやりにくいというのが、就業保証プログラムの弱点なのではないかと。

配置転換となると、金銭的なダメージはあまり無いでしょう。

就業保証プログラムからの強制離脱となると、非自発的失業を無くすという就業保証プログラムの理念からの離脱になってしまうので、本来の目的の達成ができないことになり、失敗することになります。

したがって、全国的で非自発的失業を無くすことを目的とした就業保証プログラムは極めて難しいのではと思います。

全否定はしませんけど、限定的な就業保証プログラム(JGP)がある意味限界なのではないかと。

以上です。

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